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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第18章 夏の思い出-1


村人の解説によれば、かつて、山には邪悪な魔物が棲みつき、ことあるごとに災いをもたらして村人達を苦しめていたという。
そんな人々を見かねた海の神は、ある日、勇気ある村の若者に武器を与え、若者はこの刃によって見事、山の魔物を討ち取ったという。
毎年、この時期になると行われる祭りと浜辺での舞いは、その言い伝えによるものらしい。
今となっては、昔話の一つとして語り継がれるのみのそれが、しかし遠い昔の事実であることを、煉を含めた、勘の鋭い一部の擬人化は感じ取っていた。
舞人が刃を振るうごとに、人には聞こえない風が鳴る。
山から流れ来る淀んだ『何か』が刃に裂かれ、霧散していくのが、煉の目にははっきりと見えた。

(山で感じた、あの嫌な空気が消えていく)

祭りの一部の舞と称して継がれるそれによって、今もなお、山の邪悪は退けられている。
年に一度必ず行われるのは、年を巡るたびに、倒したはずの邪悪が甦るのを防ぐ為か、あるいは滅ぼしきれずに封じ続けているのか……。
そこまでは分からないが……。
やがて舞が終わると、刃を振るっていた若者は魔物を倒したそれを、礼を持って波へと返すという儀式が行われる。
全てが終わる頃には、山から漂っていた、恐らく邪気だったのだろう嫌な空気が完全に消えていた。
このまま邪気が溢れ続けた時、自分は佐奈を守れるだろうかと思っていたが、これなら、再び山に踏み込んでも問題なさそうだ。
もっとも……。

気配を感じて、煉はそちらへと足を向ける。
そこでは佐奈が祭りの片づけを手伝っていて煉が現われたことに一瞬驚きながら、すぐに、何でもなさそうな顔を取り繕った。
でも、そんなのは、煉には思いきりバレバレだ。
それに……。

「いつまでそうやって俺から逃げるつもり」
「に、逃げてなんかないよ。ただ、手伝いがあって……」
「そんなの佐奈の仕事じゃないだろう?家に帰っても、そうやって俺を避けられると思ってる?」

頑なな佐奈に、煉の言葉がつい、辛辣になる。
途端、佐奈は手にしていた道具を抱き締めて、そのまま逃げ出してしまった。
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