第18章 夏の思い出-1
やがて…二人は無事に、村の裏手へと辿り着いた。
逃げ込むように宿へと戻れば、ほどなく辺りは群雲に覆われ、大粒の雨が村中を襲った。
何やら不思議な体験をした、そんな一日……。
はあ、と人心地つく頃には、既に夕飯時……。
そうしていつもの心地に戻れば、二人の胸に去来するのは、あの泉での告白…だった。
しかし、食事の支度の手伝いやら何やらと、『先生』は何かと忙しい。
それに…煉の目には、佐奈は自ら忙しく立ち働いているようにも見えた。
あの告白から…無事に山を下りてから、ずっと……。
それはまるで、自分の告白から目を反らすかのように、少なくとも、煉にはそう見えた。
(やっぱり、駄目ってことなのか。佐奈……)
ただ単純に受け入れられないというなら、まだ良い。
でも、擬人化の生徒だから…というのなら……。
一日が過ぎ、二日が経ち、それでも佐奈と二人きりの時間を得られずにいた、ある夜、
「祭り?」
「浜であるんだってさ」
「踊りもあるらしいぞ」
見学は自由らしい、と同室の仲間が口々に話している。
あまり興味はなかったが、部屋に篭もっていても仕方がない。
煉は、のろのろと浜辺に足を向けてみた。
途中、
「あ、煉。良かったら一緒に見に行かなーい?」
雌の擬人化からそんな声も掛かったが、相手が誰だろうが、以前も今も、もちろんこれからも煉の興味がそそられることはない。
「煉の意地悪ー!」
なんて声も綺麗に黙殺して辿り着いた浜辺では、炎を囲むように、村人達がそれぞれ何かに扮装して舞う様が見えた。