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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第18章 夏の思い出-1


せっかくの一大決心の告白だったのに、と言っている場合じゃない。
煉は手短に精霊の言葉を佐奈に伝えると、きっ、と上空を渡る風を睨んだ。
確かに、嫌な気配が伝わってくる。
佐奈にはここまでは感じられないかもしれないが、肌に刺さるような、嫌な何かがある。

「佐奈」
「え?わっ!?」

許可を取る間も、驚く間すら与えずに、煉は再び佐奈を横抱きに抱え上げた。

「ごめん、急ぐんだ」

人型になろうと、元が狼である煉の足は普通の人間よりずっと速い。
急いで山を降りるなら、佐奈の手を引くよりこの方が早いし、はぐれる心配もない分、安全だった。
走り出そうとする煉に、精霊達は来た時とは違う、麓への近道を指差している。
頷いて応じながら、煉は腕の中の佐奈をぐ、と懐に引き寄せた。

「急ぐから、ごめん」

同じ横抱きで進むにも、ゆっくり歩くのと、全力で走るのとではわけが違う。
しっかりと懐に抱いた方が、煉としては安定した状態で走ることができた。
でも、細かく説明している暇もなさそうで、煉は先に行動に出てしまった。
佐奈はいつにない煉に驚いたが、彼の判断に任せるように、その動きに従った。
煉がこれほど急ぐというのなら、それだけのことなのだろうと、佐奈なりに理解する。
間近に映る彼の横顔は、ここに来た時とはまるで違う、ひどく張り詰めたものだから……。
でも、駆ける振動が少し怖くて、佐奈の手が無意識に煉の胸元の服に伸びる。
気づいた煉は一瞬驚いたようにして、けれどすぐに、まるで安心させようとするかのように、ぽんぽん、と佐奈の背を撫でた。

「もうすぐ里に出るから」
「うん」

辺りの木々が、ざわざと騒いでいる。
どうか、追いつかれませんように。
『それ』が何か知らない。
分からないけれど、無意識の内に、佐奈はそんなことを祈っていた。
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