第18章 夏の思い出-1
最初はただ、偶然の精霊との巡り合わせに、この場所に彼女とやってきた。
思いがけず手を重ねて、その身を抱き上げて。
そう広くはないこの空間で、
二人で並びあうようにして自然を楽しんで……。
本当は、今この瞬間に告げるつもりじゃなかった。
でも、この二週間の間に、想いを伝えられたら…とは、確かに思っていたことだから。
完全に予定外、というわけでも、勢い任せでもない。
煉は佐奈に近づくと、そっと、その手を取る。
途端、ぴくり、と佐奈が震えるが、それには気づかない振りをした。
「佐奈が好きだ」
初めの頃は、人間の中で一番好きかも…程度の気持ちだった。
でも、今はそんなものじゃない。
そんな言葉で済ませられる想いじゃなくなっているから。
「何よりも…好きなんだ」
「れ……」
「佐奈だけだ」
いつか聞いた、穂香の話が煉の脳裏をよぎる。
きっと、佐奈の中にもあることだろう。
だけど…だからこそ。
「俺は、君しか欲しくない」
この先もずっと…と告げる、その合間、不意に精霊達が騒ぎ出す。
同時に、ついさっきまで穏やかだった微風が、ざわざわと嫌な音を立てて周囲の木々を揺らし始めた。
これは、普通じゃない。
野生の勘が煉にそう告げる。
佐奈もまた、何かが変わりつつあるのが、何となく分かった。
すると、ぐいぐい、と精霊達が煉を押し出すように触れてくる。
何かと訊ねれば、
『悪いものがやってくる』
そう口々に告げた。
この風はその前触れで、自分達はいつも、ここで身を隠して『奴』が通り過ぎるのを待つらしい。
だが、外から来た者は、ここにいても見つかってしまうから。
「だから逃げろってことなんだね?」
確かめるように問えば、精霊達が一斉に頷いた。