第18章 夏の思い出-1
途端、
「わっ!?」
瞬間的に目を開き、その目が瞬時に煉を捉え…あまりの至近に佐奈が思わず、とととっ、と数歩後退する。
いつになく俊敏(?)な彼女に、煉は驚きつつも、ちょっと笑ってしまいながら手を伸ばす。
強引ではないが、しっかりと佐奈の腕を掴んで、煉は佐奈が転んだりしないように、そして、このまま距離が開いてしまわないように引き止めた。
「危ないよ、佐奈。それに、精霊もびっくりするから」
前半は本心。
でも後半は、まあ、適当に……。
実際、これくらいのことで至極マイペースな精霊が驚いているかどうか、というと。
「…………」
こちらのことなど既にどうでも良いらしく、彼らはお気に入りの場所で勝手に踊ったりしている。
くす、と笑って、煉の視線が佐奈へと戻る、と、佐奈には見えていないのだろうが、精霊と隣り合って、滾々と湧き出る泉を嬉しそうに覗き込んでいる。
いつまで見ていても飽きそうにない清涼な空間……。
ここにしか咲いていない草花や、泉がやがて川になって流れ行く先の話など、煉は精霊の話をそのまま佐奈に伝えて聞かせ、佐奈は終始、興味深そうに耳を傾けながら、時に空を見上げ、時に泉や辺りに広がる緑の絨毯を見渡していた。
そして煉の眼差しは…懐かしさすら覚える緑豊かな情景でなく、いつしか、佐奈だけに注がれていく。
さすがに視線に気づいた佐奈が振り返ると、煉は一瞬、しまった、と表情を変えて目を伏せかけたが、ふと、思い直したように佐奈を真っ直ぐに捉えた。
「佐奈」
「な、なに?」
急にどうしたの?と問いながら、何故か、佐奈はちょっと構えてしまう。
何だか、煉がいつもと違うように見えた。
さわ、と揺れる心地好い風にも、もう、心が奪われない。
煉はただ、佐奈だけを見つめていた。