第18章 夏の思い出-1
見えないもの、感じられないものを信じるのは、確かに難しいだろうから。
だから佐奈がそんなのは信じられないし、行かないと言うなら、煉はそれでも良いと思った、が。
「分かった。目隠しすれば良いんだね?」
「え……」
信じるの、とつい零してしまった煉を、佐奈は胡乱に見つめた。
「嘘なの?」
「そんなことはないよ。俺は、佐奈を騙したりしない」
「じゃあ、うん。私には精霊っていうのは見えないけど、連れてってくれる?」
「了解。あ、目隠しは…そうだね、目を瞑ってくれれば良いよ」
佐奈が途中で薄目を開けたりしないと信用した上での、それは煉の言葉だった。
「転んだりしないようにサポートするから」
煉にそう言われると、佐奈は不思議と信用できて、安心もできて。
(あ、でも、そしたら手つながなきゃいけないんだっけ?)
ちょっとそこで意識してしまうのは、まるでいつかの再現…だけれど。
ここは…平常心で。
心掛けるようにして、佐奈は目を閉じる。
同時に、煉の手が佐奈の手に触れて、ゆっくりとした道行きが始まった。
「段差はないから大丈夫だよ。ただ、滑らないように気をつけて」
「うん」
転ばないように、滑らないように、それだけに、佐奈は神経を集中させる。
そうじゃないと、違うことを意識してしまいそうで。
そしてそれは、煉も同じ…いや、あるいはそれ以上の意識を抱えながら、押さえ込んでいることを、佐奈は知らない。
それから、しばしの二人…と案内する精霊との道行きは続いた。
足元の精霊が、あと少し、と前方を指差す。
が、その先には、木の根が剥き出しになったままの段差が続いている。
(これはちょっと…きついかな)
幾ら手を引いていても、目を閉じている彼女には、この段差を進むのは無謀だ。
幾ら言葉でフォローしたところで……。
(やっぱり、駄目だ)
こんな場所で…しかも自分がついていながら、佐奈を転ばせたり、怪我をさせるなんて、煉には論外だった。