第18章 夏の思い出-1
「実は良い場所があるんだけど、行ってみない?」
「良い場所?」
「うん。実はね、俺、森の精霊に知り合いがいて」
「………は?」
「で、彼らが綺麗な場所があるから見せてくれるって言うんだけど、道順を知られたくないみたいなんだ」
『彼ら』が知られたくないと思っているのは煉ではなく、人間…つまり佐奈を示してのことなのだが、そんなことまで知らせる必要はない。
煉は不要なことを口にはせずに、
「とても綺麗な場所らしいよ。ただ、さっきも言ったけど、行き方を知られたくないから、目隠しして欲しい、って頼まれてね」
「目隠し?」
「うん。ああ、でも、俺がちゃんと手を引いていくから大丈夫だよ」
そう言われて、信じがたい話ではあるが、基本、煉を信頼している佐奈は素直に分かった、と一度は頷いてしまったのだが。
すぐに、あれ?と首を傾げ、煉を見上げた。
「それって、煉は目隠ししないってこと?」
目隠しした自分を誘導するということは、つまり、そういうことじゃないだろうか。
ある場所への行き方を、自分には見せたくないが、煉はOKと、そういうこと…なのか。
いやいや、そもそも、いくら煉を信用しているとはいえ『森の精霊』というのはちょっと突拍子がないような気もする。
普通、いきなり『精霊』がなんて言われたって、信じられるものじゃない。
唐突にそんなことを言おうものなら、思いきり不思議ちゃん扱いだ。
じっ…、と佐奈が煉の出方を見守っていると、彼は、ちょっとしまった、という顔をして、けれど首を竦めるだけだった。
「精霊の話は本当だよ。佐奈が信じないなら、それでも構わない。でも俺は元が野生で、こういう場所で育ったから、人間には見えないものが見えるし、話もできるんだ」
でも普通は信じられなくて当たり前。
それは仕方がないことだからと、煉はそれ以上を佐奈に訴えようとはしなかった。