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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第18章 夏の思い出-1


一日…二日、そして三日と、長閑な景色に包まれた暮らしは、何処かゆっくりと時間が過ぎていく。
人が入っても危険がない程度の小道を進んで森に入れば、辺りが一斉に緑の香りに満ちる。
ふと、煉が気持ち良さそうに目を細めるのを見て、佐奈は何処か微笑ましい気持ちで眺めていた。

(狼だった頃のこと、思い出してるのかな)

今、隣にいる彼は間違いなく人の姿をしているのに、何だか真紅の狼の姿が重なって見える気がして、佐奈は思わず首を振った。

「?どうしたの?疲れた?」

気づいて振り返る煉に、佐奈は小さく笑った。

「ううん、平気だよ。それより、ここでは先生と一緒にいなくても良いんだよ?」

ここは家とは違う。
だからといって、教師の傍にいなければならないという決まりもない。
現に、中には仲の良い擬人化同士だけで、山へ散策に出掛ける面々もあるようだ。
なのに煉は、初日からこうして、佐奈の傍にいる。

「ごめん、迷惑だった?」

佐奈が人間の同僚達から誘われているのを、実は煉は知っている。
それを承知の上で、一緒に出掛けようと誘えば、佐奈は自分を優先してくれた。
擬人化達は基本的に自分の教師を慕っている。
それがどういう種類の思慕かは別として、教師の傍にいたがるのが、何と言うか、擬人化達に多く見られる性情のようなものだ。
だから自分だけが、先生の傍にいたがっているわけではないし、煉の目には、佐奈は既に先生の範疇を超えた存在だから、尚更…だったりもする。
だから佐奈が同僚より、例え生徒だからという理由からでも、自分を優先してくれることは、ちょっと罪悪感はあっても、でもそれ以上に、煉には嬉しいことだった。

曇り空の下…それでも雨は降りそうにないからと、海に行きたがった佐奈を、煉は山へと誘った。
佐奈が行きたいのなら、と浜辺まで行ったものの、天気のせいなのか、波が荒い。
泳ぐのは無理そうだね、と呟く佐奈の声を聞いている煉の目には、波間に漂いながらこちらを見る『何か』が霞み見えた。
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