第18章 夏の思い出-1
まあ確かに、家とは違う場所で教師(佐奈)と二人きり…同じ部屋で寝泊りなんてことは考えていないし、それはそれで煉的に色々問題だから、彼女と同室じゃないことは納得…だったりするのだが。
出発前に通知された宿泊先での同室の面々を思い浮かべて、煉は面倒そうに息を吐き出した。
どれもとりあえず顔見知りだ。
でも、特別仲良しというわけでもない。
何より、群れるのが嫌いな煉としては、
(八人で雑魚寝とか……)
考えるだけでありえない気がしてくる。
なのに佐奈は、そんな苦い煉の気持ちを知ってか知らずか、というより、今回は明らかに前者のようなのに、わざと、にま、と笑うのが見えて、煉は眉間を寄せた。
「何?意味ありげな笑い方して?」
「ウチの煉くんはみんなと一緒って苦手だからねー、と思って」
「………っ」
やっぱり分かってて言っている。
ちろ、と、やんわりねめつけるようにしたって、佐奈の笑顔は解けなかった。
「苦手なのは分かるけど、こういうのって滅多にない経験なんだよ?体験してみたら、意外に楽しかったりするから」
「そういうものかな」
「そんなもんだよ。あ、でも、夜中まで騒いだり、枕とか投げて暴れちゃダメだからね」
「それは佐奈先生の過去の教訓?」
言われっぱなしでいられるかとばかり、煉は佐奈の言葉に、ぴん、ときたことを口にする、と、案の定、
「わ、悪い?」
大正解、だったらしい。
そして。
「開き直ったね」
「ふんだ」
「ぷっ」
何だか自分も子供っぽいなあ、と自覚しながら、佐奈もまた、何だかいつもより子供っぽいような、そんな気が、煉はしていた。
子供っぽいというのか、童心にかえるというのがこういうことなのかは、分からないが。
楽しくて、つい吹き出してしまう、そんな彼らを取り巻く木々が、ざわざわと風に揺れている。
何処か懐かしい…緑深い景色の懐の中、思い出に残るだろう二週間が始まろうとしていた。