第18章 夏の思い出-1
さすが…男の人なんだなあ、という純粋な感嘆は、今は置いておいて。
「平気だよ、これくらい」
佐奈は煉の横に張り付いて荷物を取り返そうとするが、
「持たせてよ。俺の運、佐奈にあげるからさ」
あっさり却下な、その上に。
「そ、それとこれとは関係ないでしょっ!」
こうして軽口を叩き合えるようになった近頃、何かと佐奈は煉に負けっぱなしで悔しい日々だったりする。
一応、人生経験だって、時間の長さだって、人間としては自分の方が煉より色々…多分、知っているし、分かっているはず…なのに。
(か、勝てないっ)
何だか、無性に悔しい。
それに、その上更に。
「俺、今両手ふさがってるから、転ばないように気をつけてね」
手が塞がっている=咄嗟の時に支えられないから…だから気をつけて。
つまり煉が言いたいのは、そういうことだ。
しっかり読み取れるようになったこれも、彼との日々の賜物…なのかもしれないが、素直に喜べないのは、自分が素直じゃないのだろうか。
佐奈は憤然としつつ、ちょっと先を行く煉の背中に、んべ、と舌を出してしまってから……。
(子供だ…)
我ながら、子供過ぎる。
日常を離れて、そんなつもりはないけれど、もしかしたら、ちょっと浮かれてしまっているのかもしれない。
(いけない、いけない)
ちゃんとしなくちゃ、と自分を戒めるようにして、佐奈は小走りに煉の隣に追いついた。
「旅館では、煉は他の擬人化達と同室だから、ちゃんと仲良くしてね」
先生らしい台詞を口にしながら、佐奈は見えてきた純和風の建物を指差した。
そこが今夜から宿泊予定の旅館だったが、何しろ、小さな村であるここには元々大きな宿などない。
幾つかの宿に擬人化と教師とを数名ずつ振り分けて宿泊するというシステムだ。
部屋の数も限られているわけだから、誰かと同室というのは、煉にしても最初から予想はしていたのだが。
その部屋割りとやらが、擬人化は同性の擬人化同士、教師もまた、同性の教師同士、という組合せが、煉的には何となく面白くなかった。