第17章 心の距離とか、温度…とか
『それでも俺は…穂香さんが……』
先生と生徒としてじゃなく……。
『でも…それでも、穂香さんがああ言うなら、俺はちゃんと、普通の生徒に戻るべきなのかな……』
カフェで少しのんびりした後、公園でそう告げた彼の、強く握った拳は微かに震えていた。
成体…つまりは獣としては大人であっても、擬人化としての年月が浅い彼らの中には、大人であっても大人ではない、まだ子供のような感性など、様々なものが同時に内包している。
だから…個体差もあるが、とても不安定な部分もあるのだと、佐奈は研究所で教えられた。
遙の葛藤は、まるでその一端を見ているようで、佐奈は胸が締め付けられて…気づいたら、震える彼の手を自分のそれで包んでいた。
煉が現われたのは、それからすぐのことだ。
追想する佐奈を、煉が怪訝に見つめる。
「佐奈?」
はっ、として、佐奈は別に、と笑った。
「ほら、カキ氷ー!」
早く行こう、と急ぐ二人の口から、その日の出来事が語られることはもはやなかった。