第17章 心の距離とか、温度…とか
こういうやりとりなら、いつでも、いくらでも。
呼吸をするように自然に交わすことができるのに。
煉をほんのちょっと違って意識してしまう、そんな瞬間が、なくならない。
でもそれは、あまり良くないこと…だと思うから。
意識しなければ良い…しては、いけない……。
先生と生徒。
あるいは、友達のような関係…・。
それが、理想的な距離。
「ほら、早く行こう」
夕暮れ時に差し掛かる頃、とはいえ、まだまだ纏わりつく空気は熱を孕んでいる。
店(カキ氷)へと急かす佐奈の隣で、煉ははいはい、とおどけるよう笑った。
「ところで、あんな場所で遙と何を話してたの?」
「ん? それは…ナイショ!」
「……へえ?」
「そ、そういう煉こそ、穂香と何話してたのかな~」
「さあね?俺も内緒、かな」
「ふーん?」
互いに知りたいくせに、でも結局明かさない、そんな駆け引きもどきをする二人だったが、実のところは佐奈もまた、穂香ほど多くを語ったわけではないが(穂香の過去を語るようなことももちろんしないし)、あくまで擬人化とその先生との恋の結末の一例を、遙に話して聞かせていた。
その上で、改めて考えてみたら良いんじゃないか…と。
(ああ、でも……)
やっぱりというのか、自分はまだまだだ、と佐奈は思う。
遙から話を聞くまで、彼の穂香に対する気持ちを知らなかったとはいえ、もっと良いアドバイスなり、言葉なりを言えたら良いのに。
『穂香さんは、俺が生徒だから、ダメなのかな……』
泣きそうな、切なそうな彼の顔が、佐奈の脳裏から離れない。