第17章 心の距離とか、温度…とか
でも…今なら……。
彼の気持ちを受け入れることはできなくても、ちゃんと向き合うことはできる気がした。
それは図らずも、煉と話したから…かもしれない。
そういう意味では彼にちょっと感謝の念も浮かぶが、でもやっぱり。
「やっぱり、苦手だなあ……」
にこにこと柔らかそうに笑っていたかと思えば、痛いところを鋭く突いてくる。
何より大事と公言した佐奈には、恐らくそんなことはしないのだろうけれど。
(ってことは、佐奈はあいつのああいうとこ、全然知らないんじゃ…?)
それってどうなの、と穂香が胡乱な目を宙に向けている頃、煉はマンションのすぐ傍にある公園の中に求めていた姿を発見していた…が。
「………」
見つけた姿に煉の目が和んだのは、ほんの一瞬、直後、それは不穏に細められる。
それでも何食わぬ顔で更に近づこうと歩みを進めれば、いち早く気配を察したらしい遙が、はっとしたように顔を上げた。
が、煉の視線を捉える『それ』はそのままで、それにも遅れて気づいたらしい遙は、バツが悪そうに佐奈から距離を取る、と、するり…と離れた『それ』は、二人の手……。
どういう経緯かは不明だが、項垂れ佇む遙の拳を、佐奈が両手で包んでいて。
離れると同時に顔を上げた遙の視線を追うように、佐奈もまた、同じ方へと目を向けた。
「煉」
そこでようやく、佐奈は煉の到来を知ったらしい。
煉へと身体ごと向き直る佐奈だったが、しかし遙がそれを庇うように立ちはだかる。
それが煉にはまたも不快だったが、それを露わにする煉でもない。
「こんな場所にいたら暑いだろうに」
熱中症になっちゃうよ?なんて茶化しながら至近に歩み寄った時、遙が、ぺこ、と頭を下げた。
「ごめん、煉。俺のせいだ」
彼女は何も悪くない。
庇うように立つ仕草に、更に重ねて庇う彼の言葉。
遙は信用できる仲間で、友人だけれど。
「分かってるよ」
あくまで穏やかに告げるのも、そこまで。