第17章 心の距離とか、温度…とか
『嫌い』とは思わないが、少なくとも穂香にとって煉はとても『苦手』だ。
もしも自分が先生になったなら、それこそきっと手に余ることだろう。
先生となったのが佐奈だからこそ、彼は心を開き、あれほど想いを傾けているのだろうから。
「あ……」
そこまで考えて、穂香は気づいたように声を上げた。
「ああ、そっか……」
擬人化は、身近にいる『先生』に恋愛感情を抱くことがままある。
でもそれは結局幻想に過ぎず、だからこそ、哀しい結末が生まれてしまうのだと煉に告げ、穂香自身もそう思っていたからこそ、敢えて口にもした。
だが、佐奈が相手でないのなら、あの彼…煉は恐らく恋になど落ちないだろうと、何だか簡単に理解できてしまう気がした。
別の…どれほど優秀な先生の元についたとしても、その教師を純粋に『尊敬』こそすれ、相手を恋い慕うことは、きっとない。
けれど…彼は佐奈に出会って、その生徒となった。
こういう考え方はどうかとも思うが、煉は、佐奈に出会ったというより、見つけたのかもしれない。
だからあれほど想っているし、何を言われても揺らぐ様さえなかった。
擬人化だから…獣だから、とかは思いたくない。
でも、もしかしたら人間が忘れかけているような真っ直ぐな何かを、彼は…そしてあるいは擬人化達は持っているのかもしれないと、穂香は思えるようになっていた。
まだレベル50にも満たないというのに。
成長の途上でこれでは、先はどうなっていくのか。
煉の想いが本物なのは良いことかもしれないが、それは佐奈にも幸い…なのかどうかは……。
「こればっかりはね…」
それに穂香もまた、人のことばかりを言っている場合じゃないと思い立つ。
「昨日のこと、遙に謝らないと」
現時点では、少なくとも穂香の目に遙は『異性』としては映らない。
が、だからといって、昨夜、必死に告白しただろう彼を、自分は過去の苦い経験ゆえにそんなことは聞きたくないと、冷たくあしらってしまった。
「あれはないよね」
傷つけてしまったとすぐに感じても、昨日の自分は、何もできなかった。