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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第17章 心の距離とか、温度…とか


理解できないと首を振る煉に、穂香はそうだね、と少し哀しげに微笑んだ。

「もちろん擬人化の成長に伴ってとか、擬人化だからとか、そんなこととは無関係に別れる場合もあるみたいだし、人間同士だって、まあそこは似たようなものだけどね。でも擬人化が、恋人になったはずの教師に、ある日突然、そうじゃなかったのかも…なんてと言い出すのは、つまり、そういうことなんだろうな、ってね。そもそも恋愛なんかじゃなかったのか、それとも…恋人関係になったことで『先生』じゃない部分を知って幻滅でもしたのか、詳しくは分からないけど」
「『そうじゃなかった?』」

それはどういう意味なのか。
同じ擬人化でも、煉にはその言葉が理解できなくて、つい、そのままに反芻してしまった、と、穂香が頷いた。

「うん。先生と同居している擬人化にとって、先生は一番身近な存在で、味方で、だから思慕も募りやすくて、それを恋愛感情だと錯覚することも多いみたい。でも擬人化として多くを学んでいけば、その視野も、世界も自然と広がっていく。そうやって開けた世界を見て、たくさんの人と接するようになった時、成長した擬人化は、一度は最も大切だと想った相手が実はそうじゃないのかもって思うことがあるっていうか、まあ、身近で実際あったのがそれなんだけど。それまでは狭い世界しか知らなかったから、そこに…自分の一番近くいたのが先生だったから、だから先生ばかりを見てしまっただけで、それは本当の恋愛なんかじゃなかったって気づいて…それで、終わり」
「…………」
「先生の方は本気になっちゃっても、生徒はそうじゃなかった。元々温度差があったんだから、破綻して当たり前だよね」

でも、それに気づかずに、あるいは薄々気づきつつも受け入れ、恋仲になる教師と生徒もいる。
もちろん中には本気で想い合い、今も睦まじく暮らしている例もあるが。

「世界…ですか」

吐息するように呟いて、煉は、ぐ、と拳を握った。
表情は、それほど崩さないまでも、何処か…堪えるような色が見えた。

「広さなんて…関係あるんですか」
「え?」

長く語った穂香に、今度は煉が言葉を返す番だった。

「大体、擬人化より長く生きてる人間は、確かに俺達よりは『広い世界』を知っているんでしょうけど、じゃあ、それは、どれほど広いっていうんです?」
「煉くん……?」
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