第17章 心の距離とか、温度…とか
「遙から聞いたんだ?そうだね、それもあるかな。でも、これは擬人化全てにとって共通のことなの」
「共通?」
「そう。もちろん、あなたにもね。煉くん」
「…………」
「遙もあなたも、今は『先生』と一緒に暮らしてる。でも、それは一生じゃない。いつかはちゃんと独立していくし、そうならなきゃいけない。一番身近にいる『先生』を、まるで世界の全てか何かのように思い込む生徒もいるけど、現実はそうじゃない」
淡々と語る彼女の言いたいことが、少しずつ、煉には見えてきた気がした。
恐らく彼女は、自分に警告しているのだ。
自分の…佐奈への気持ちまでは知らないだろうが、そうならないように、と今のうちに釘を刺しておく、くらいのつもりなのかもしれない。
でも……。
(もう遅い。それに……)
自分の想いは勘違いなんかじゃない。
誓っても良い。賭けたって良い。
どんな表現を使っても、佐奈への気持ちは、今、彼女が警告しているような種類のものなんかじゃない。
でも、それをここで訴えても始まらない。
何しろ、佐奈本人にすら告げていないのだ。
だから…彼女の言葉は甘んじて聞くけれど……。
「それは…過去のご経験からですか?」
煉にすれば心外な警告に、返す言葉が僅かに鋭くなる。
穂香は刹那、頬を歪め、それから、小さく笑った。
「優しい笑顔して、結構きついし鋭いね、煉くん。そう…だね、私の経験も入ってるし、研究所内の他の先生と生徒との実例もあるかな」
「実例?」
「先生と生徒が恋愛関係になることがあるって話は、擬人化達の間でも結構有名な話らしいから、あなたも知ってるでしょ。でもその後、擬人化の成長に伴って別れる…っていうより、擬人化にとって必要とされなくなる例が結構あるってことは、知ってた?」
「必要とされなくなる?」
それは初耳だ。
擬人化が、自らの成長によって大切な存在を不要に思う…なんて。