第17章 心の距離とか、温度…とか
「で、急に午後半日空いちゃったから、どうしようかって話になって」
「それならウチに来ない?って私が佐奈を誘ったわけ」
代わる代わるに言葉を継ぐ女性陣を、その度に交互に見遣るように煉と遙が視線を振り分ける。
まるでシンクロするような彼らの動きに笑いながら、佐奈は買い込んできた菓子やらジュースやらの袋を煉に押し付けた。
「はい、これ。よろしく!」
「え?」
「穂香にはお茶の準備しといてね、って頼んで、私は買い出し係してきたの。だから、はい」
『はい』と言われても……。
眉間を寄せながら煉が部屋の奥を覗き込むと、そこには確かに、セッティング済みのティーセットやら、菓子を並べる為の皿やらが見える。
なのに、既にこれで十分という量があるにも関わらず、
「私は追加の買い出しに行ってくるから、んーと、遙くん!」
「え? は、はい!?」
更にもう一度出掛けると言い出した佐奈は、煉ではなく、遙を指名した。
「手伝ってもらっても良い?」
「え、あ、まあ…」
「じゃ、遙くん借りるね、穂香」
「うん」
女性二人のやり取りは至極簡潔かつ淡白に、結果、遙は佐奈に外へと連れ出され、煉はというと……。
「それじゃ、煉くん。手伝ってもらえる?」
そう言われては、残された立場として断るわけにもいかない(他にすることもなさそうだ)。
どうしてこうなったのかと今ひとつ納得できないままに、煉は穂香に言われる通りに菓子を皿へ並べた。
「私の好みもちゃんと入ってるけど、この辺は佐奈セレクトだね」
ふと穂香が指で示した先を見て、煉もつられたように、くす、と笑う。
「そうですね。佐奈は甘いものが好きですから」
「そうなのよねー。私はあっさりと辛口系が好みなんだけど。あの子は甘党だから。あ、もちろん、私も甘いもの好きだけど」
取ってつけたような語尾に、煉はますます笑った。
彼女が酒豪なことは佐奈から聞いているし、所謂お菓子というよりも、酒のつまみ系が好きだということも、実は聞いている。
それを目の当たりにしてしまうと、あまり表情を崩さない煉をして、ちょっと笑いたくもなるというものだ(穂香は佐奈と親しいせいか、煉も何となく構えが緩くなるらしい)。