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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第17章 心の距離とか、温度…とか


「大体、今頃バイトのはずでしょ?仕事サボって何してんの」
「は?今日は俺、昼までだけど」
「………え?」

言われて、穂香はとてとてと、とある壁際に寄り、貼り付けてある遙のシフト表を確認した…途端、

「ま、間違えた」

一日ずらして記憶違いをしていた模様で。
うわあ、と頭を抱える穂香に、遙は苦笑しながらドア越しに立ったままの煉を招く。
これは上がりこんで良いものなのか。
迷いつつもドアの中へ入ろうとした、その時、ふと廊下の向こうから煉のよく知る気配が近づいてくるのが分かった。

(え……?)

まさか、と思う。
だが、自分が彼女を間違うはずはない。
そんな自負が煉にはあって、そう思っている間にも気配はどんどん近づいて、半開きになったままのドアの、その向こう……。

(佐奈?)

この距離では、もはや間違いようもない。
瞠目する煉だったが、しかし、閉じかけたドアの向こうの佐奈は気づかない。

「もう、穂香。ドア開いてるよ。無用心じゃ……」

ないの、と続く言葉は、ドアを開け様、煉を捉えた佐奈自身によって呑み込まれた。

「煉?」
「佐奈?何で……」

今日の煉のシフトを、佐奈はちゃんと把握していた。
だから佐奈にとって、煉がバイト帰りに友人(遙)の家に立ち寄っているのは、別に理解できないことじゃない。
が、煉にしてみれば、本来仕事中のはずの佐奈がここにいるのは不審この上なかった。

「佐奈……?」

まさか体調が…と、つい最前の再現のように、煉の思考も遙のそれのように傾きかけるが、何やらどう見ても元気そうで。
でも職場にいずに、ここにいる。
そこには煉の理解は追いつかない。

「どういうこと?」

煉が純粋な疑問を口にすると、部屋の奥から別の女性…穂香が代わりに答えを返した。

「私と佐奈は今日は代休なの」
「「代休?」」

煉と遙と、見事に重なった声に穂香は頷き、佐奈がうんうん、と肯定しながら、言葉を継いだ。

「最近、休日出勤が重なったから、代休取るように言われたの。しかも今日なら余裕があるからって、いきなり」

更に言うなら丸一日ではなく、結局は午後半日だけだけど、と佐奈は穂香と顔を見合わせて笑った。
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