第17章 心の距離とか、温度…とか
振り返った先には、まだ迷っているような表情が見える。
いつもは明るい男なのに、何だか珍しい。
「どうかしたのか?」
煉が先を促すと、遙はまた少しだけ迷い、それから…俯きながら呟いた。
「俺、穂香(ほのか)さんに告白…したんだ」
「…………」
聞けば、それは昨夜の出来事で、しかし。
「振られたっていうより、相手にもしてもらえなかった」
こんな惨めな気持ちなんて、誰にも言いたくないし、知られたくない。
でも…どうしようもない気持ちを、何処かで吐き出したくて。
苦しげに頬を歪める遙の中に、煉は自分にも起こりうる未来を見た気がして、気づいた時には遙の腕を掴んでいた。
「煉?」
「飲みに行く?」
「え……」
「あ、でもまだ昼間だし……」
だからといって外で時間を潰すには暑すぎる。
逡巡する煉の意図に気づいて、遙が提案した。
「じゃあ、ウチに来る?」
「遙の?」
「うん。この時間なら穂香さんも仕事でいないし」
彼女が帰ってきたら、それはそれで気まずくなるが、少なくともそれまでは……。
「穂香さん、酒好きだから色々置いてあるしさ」
ちょっともらっちゃえ、と道化る遙の笑顔は空元気なのが見え見えだったが、煉は、それには触れなかった。
ただ、家に誰もいないということなら、佐奈も同じく仕事で留守だから、それなら自分の家に…とも思って言いかけた、が。
(ウチにはあんまり酒はなかったっけ)
二人で晩酌…なんて日もあるにはあるが、佐奈はあまり強くないし、煉もそれほど頻繁に飲むわけでもない。
特に佐奈がワインに激弱なのは、つい最近、煉は身を持って知った。
だから…というわけではないが、基本、家にあるのは煉が嗜む程度の品揃えだ。
対して遙の先生は酒好きの上に、そういえば佐奈からも聞いたことがあるがかなりの酒豪らしく、自宅には様々な酒が揃っているとかいないとか。
そうなると、やはり行き先は遙の家の方が良さそうだ。