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擬人カレシ~真紅の狼・初めての生徒編~

第17章 心の距離とか、温度…とか


そういえば…あの夜、研究所でシオンは、獣化した自分と佐奈の前で、もう二度とこんなことはないから安心するようにと、やけに自信ありげに言っていた。
それに……。

(ペナルティがどうとか……)

そうだ、と煉はシオンの言葉を思い出した。
このペナルティは重いとか何とか……。
確かにそう言っていた。
やけに辛辣に…そして、やはり自信満々に。
あれはどういう意味なんだろう、とは、佐奈も以前首を傾げていたが、一応『あの人』はまだ研究所内に存在しているらしい、ということ以外、何も分からないし、煉にしてみれば、二度と関わらずに済むのなら別にどうでも良かった。
もっとも、シオンのあの言いっぷりの裏に、やや(かなり)、ぞくっ、とするものを感じないわけでもないが、そこは…まあ、とりあえず考えないことにして。

(佐奈に害がないなら良い)

既に、煉的基準は常にそこだったりする。
だから…かは知らないし、それだけ自分が佐奈によっていつの間にか癒され、そして変わることができたのかもしれない。
もうそこにはいないという、一人目の教師だった『あの人』と自分が暮らしたかつての場所を眺めても、今はもう、何も感じない。
以前は何かしら思い出して不愉快な気分になったりしたこともあったが、今は…何も感じないし、過去のことだと割り切ることができるようになった。

何故なら自分には…『今』がある。
佐奈が…いる。
もう…ただの先生なんかじゃない、そんな風には思えない、大事な大事な女性。
今があって…彼女を想う、未来があって。
だから…過去を引き摺ることは、もうありえない。
煉は落ち着いた様子で目を伏せると、今自分が帰るべき場所へと視線を据えた。

平日昼間のこの時間、佐奈はまだ研究所で仕事中だろう。
帰宅しても、そこに佐奈がいないのはちょっと淋しいが、でも、家の中には、佐奈の気配の残滓がそこかしこに残っている。
人間には分からない感覚かもしれないが、煉ならずとも、獣の感覚を有するものであれば、その空間に誰が…あるいはどんな存在がいたかを、感じ取ることができた。
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