第16章 誕生日譚~顛末
「うにゅ……」
「佐奈、大丈夫?」
「らいろーぶー」(←大丈夫と言っているらしい)
「酔っ払いの『大丈夫』は全然アテにならないんだよ、佐奈」
今の佐奈が正にそれだ。
彼女がそれほど(アルコール)に強くないのは知っていたが、あれよあれよという間に自ら楽しそうにグラスを重ねて、慌てて煉が止めた時には、既に出来上がってしまっていた……。
こんな状態の相手に『告白』なんて、もはやありえない。
でも、それはそれで、また日を改めれば良い。
そんな風に考えられるのは、彼女との日々がこれからも続くと信じられるからだ。
ふらつく佐奈を支えながら店を後にした煉は、もはやまともに二足歩行できない彼女と歩くことを諦めた。
「ほら、ちゃんと掴まって」
言いながら、煉は佐奈を背に歩き出す。
途中、佐奈の靴が何度も脱げてしまうから、煉はそれも手にして、やれやれ、と息を吐いて家路につく。
でもそれは煉にとって、とてもとても、不思議なほどに幸福な帰途…だった。
だがしかし、幸福の後には、得てしてその真逆な現象に見舞われることがしばしばある。
「ほら…佐奈」
「ん~~~っ」
何が困るって、家について、彼女をベッドに横たえて終わるはずが、それまで背負ってきた煉の服を、佐奈の手が掴んで離してくれないのである。
「佐奈、ほら、離して?」
「やー……」
「やじゃなくてさ」
勘弁してくれ、と、煉は額に手を当てる。
目の前には好きで好きで堪らない、だけど今は完全に酔っぱらい状態の女性。
こんな状態の相手に何かするなんて、それこそありえない。
だから、そんなつもりなんてない…のに。
こんな風にされたら……。