第16章 誕生日譚~顛末
そして、同じこの場所に佐奈がいることが、煉には何よりも……。
「すごく、嬉しいよ」
静かに呟いて、煉が周囲に向けて『ありがとうございます』と頭を下げれば、新たな拍手が彼を包む。
そうしてひとしきり祝福の波が過ぎれば、そこは元通りの落ち着いたレストランへと立ち戻る。
煉も元の落ち着きを取り戻したのか、ポケットから自分のスマホを取り出した(ちなみに佐奈とは同機種の色違いである)。
「さっき撮ってもらったそれ、俺にも送って」
よく撮れているそれを強請る彼に、
「うん、良いよ」
佐奈は快く頷きながら画像を送った、と。
煉はその場で待ち受け画面に設定して見せた。
「うん、本当だ。よく撮れてるね」
「うん、そうだね。って、待ち受けはやめようよ」
「どうして?せっかく綺麗に撮れてるんだし」
これは俺のスマホなんだから問題ないでしょ、なんてかわされてしまうと、佐奈も何だか強く言えなくなってしまう(佐奈的には十分問題なのだが)。
これも誕生日効果…なんだろうか。
そう思わないでもなかったが、満足げにディスプレイを眺めている煉に、佐奈も相好を崩すしかない。
「確かに、よく撮れてるね」
そんな彼女の言葉を受けて、煉もうん、と頷いた。
ケーキを前に、寄り添った二人が嬉しそうに笑っている。
何も知らない誰かが見れば、それはまるで恋人同士のように……。
今日は一日佐奈を振り回すことになってしまったが、最後にこんなサプライズがあるなんて、煉も思っていなかった。
「今日は、嬉しかった……」
うっとりと呟けば、佐奈もそうだね、と請け合ってくれる。
嬉しくて、楽しくて。
煉は佐奈へと募り続けた想いを、この時、告げてしまおうか、と気持ちがよぎった。
本当は、今日はその予定ではなかったけれど。
遅かれ早かれ…そう遠くはない未来に告げるつもりだった、もう、秘め続けていられないと思っていたことだから。
でも、いきなり、というのもちょっと勇気が要って…だから、空になっていたグラスに気づいた煉は、景気づけとばかり、追加のワインをボトルでオーダーしてしまった…のが、思えば彼には仇となった……。