第11章 気掛かり
「…聞き飽きるだけ嫌味だのヤなヤツだの言われてんのか…。いいのか、オメェはそんなんで。うん?」
「煩いですね。どうでもいい事を言ってないで、さっさと答えたらどうです?互いに時間の無駄ですよ、これじゃ」
「バ…ッカヤロゥ!!オメェが要らなく絡んで来たからだろ!?あったま来んな!」
「ああ、そうですか」
「…付き合い辛くて泣きたくなって来たぞ、おいコラ」
「ええ?泣くんですか。それは鬱陶しい。どうしても泣きたいなら私が出て行った後にして下さいよ」
「テメェが出てきゃ泣かなくてすむんだけどな、うん?」
「くどい。先刻から用が済めば出て行くと言っているでしょう」
「サソリの旦那の居所なんか知らねえぞ」
「サソリの何が臭うんです?」
「オメェこそ行間を読め」
「確証が欲しいからこうしているのに行間を読め?そんなモンで満足するならわざわざあなたのとこになんか来ませんよ。ホント馬鹿な事言いますね」
「……オメェとはあんま長く話したくねえなぁ」
「ならさっさと質問に答えたらいいでしょう。イライラしますねぇ…」
「そうかよ。俺もイライラしてるぞ。たく、しつけえな、オメエも」
「サソリの行動に何か不審なところがあるというのなら教えなさいと言ってるんですよ」
「最近土臭え。旦那にゃ珍しい事だ。たまに材を採りに山に入るときを抜きゃ旦那が泥臭えなんてこた今までなかった。何せ完璧なインドア人間だからな、旦那は」
「サソリには山の隠れ家がある筈です。材を採る縄張りに必ず憩う場所を構えている。脆弱ですからね、あの人形狂いは。好んで野宿するとは思えない」
「…ああ、あるだろうな、うん」
「わかるだけ教えなさい。サソリに用がある」
「余計な事ァ言いたかねえな」
「余計かどうかなんてあなたにわかるんですか?私がどういう意図で話しているかも知らないのに」
「馬鹿にすんな。オメエ、旦那ンとこに牡蠣殻がいるんじゃねえかと思ってんだろ?」
デイダラの指摘に鬼鮫は表情を動かすことも無く、壁に寄りかかった。
「まあ有り体に言えばそうです」
「ねえよ。あんだけ牡蠣殻を嫌ってンだぞ?好き好んで囲うかよ」
「利益が得られるのであれば事情が変わる」
鬼鮫が口角を上げて言い切る。
「あなたの相方も犯罪者らしく人並み以上に己の利益には貪欲でしょう」