第11章 気掛かり
「私が何をしようと、あなたには関係ない」
鬼鮫は尖った歯を剥いて笑った。目を眇めて卓の木塊とデイダラを見比べ、顎を引く。
「そういうあなたこそ、甲斐も無い相手に大枚を叩いて健気な事ですね、デイダラ?」
「うるせえな!」
「気を悪くしましたか。それは良かった。あまりにあなたが未熟なもので、ついからかいが過ぎました。すいませんねぇ」
「…ホンット、ヤなヤツだな、テメェは。殺すぞ?」
「またそれですか。出来るものならやってみなさい。お好きにどうぞ。ふん、しかしそうですか。私は厭な人間ですか。それはそれは。ありがとうございます」
「……もうあっち行けよ。何なんだ、一体」
「話を聞きに来たと言っているでしょう。何度言わせるんです。馬鹿ですねぇ…。用が済んだら言われずともすぐ行きますよ。白檀は匂いがきつ過ぎて好きませんからね。気分が悪くなる」
「こんだけ人を馬鹿にしたような事言って、話なんかして貰えると思ってんのか。図々しいにも程があんぞ、オメェ」
「程度や手加減を知らないのが私の欠点でしてね。知りませんでしたか?」
「オメェの事なんざ知ったこっちゃねえぞ。俺に深く知って欲しいのか?私を見てってか?…止めろよ…、すンごく気味悪ィ」
「…臭いの下りといい、行間を読めない人なんですね、あなたは…」
「……何だよ、その気の毒そうな顔は?いい加減マジでぶっ殺すぞ、うん?」
「だからやりたければやりなさいと言ってるじゃないですか。しつこいですねえ、面倒臭い」
「オメェ本当に何しに来たんだよ。喧嘩売りに来たのか?かまって欲しいのか?そんなにオイラが好きか、うん?」
「…何処からそういう発想が出て来るんです。幾ら自称芸術家とはいえ発想が明後日なのにも程がありますよ。気持ち悪い」
「俺も言ってて気持ち悪くなった、うん」
「でしょうね」
「……早く出てってくんねえか?いよいよヤになって来たぞ、うん…」
「サソリの何が臭うんです?」
「あー…」
デイダラは頭を掻いて溜め息を吐いた。
「オメェが期待してるような事ァ何もねえぜ、うん?」
「お気遣いなく。それは私が決める事ですよ」
「いちいち嫌味臭えな、オメェは。ヤなヤツだ」
「ふ。さんざ聞き飽きた事を聞きに来たんじゃありませんよ。質問に答えて下さい」