第11章 気掛かり
「あれ?」
「…あれじゃないぞ、馬鹿者が…。日頃あれだけ不死を売りにしておいて何だ、この様は。流石に恥ずかしいと思え、飛段。俺も相方として顔から火が出る思いだ」
「え?顔から火が出んのか?何ソレ、カッケーじゃねぇか!新しい技かよ、角都」
「…いや、もういい」
こめかみを押さえた角都が顔を上げたとき、目に入ったのはイタチと飛段だけだった。
「ーおい。デイダラと鬼鮫はどうした」
「あん?」
「デイダラはとっくに出て行った。鬼鮫は気掛かりの取っ掛かりを掴みに行ったのだろう」
飛段に呑み干されたお茶を淹れ直し、ついでに角都と飛段の前にも湯気の立つ湯呑みを置いて、イタチが最後の団子を手に取った。
「是非聞かせてくれ。飛段は実は死ねるのか?角都はどうした経緯で顔から火を噴けるようになったんだ?どちらも興味深い事この上ない」
「…イタチ。早く任務に行け。お前の真面目さは気に障る」
「……」
「…いや、いい。団子を食い終わるまで黙っていろ。目で語るな。何か凄く厭だ」
「鬼鮫の気になる匂いって何だ?サソリのヤツ、そんな臭かったか?」
飛段の問いに団子を呑み下したイタチと角都が目を合わせた。
「…土」
「僅かに乾いた植物の香り」
「更に微かに煙草」
「……据えた甘い匂い」
「それに薪の燻り」
角都が顎を撫で、イタチは湯呑みを片手に包んだ。半眼で聞き終えた飛段は眉根を寄せて卓から足を下ろす。
「よくわかんねえな。けど煙草ってこたァ、もしかしてアレか?…牡蠣殻?」
「それと麻薬だな」
イタチの淹れたお茶に口をつけて、角都が息を吐いた。
「確証はない」
「だからこその気掛かりなのだろう」
空の竹皮を丁寧に畳んでイタチが立ち上がった。
「確証を得て迷いがなくなるのであれば是非もない。気の散った者と任務をこなす気はないからな」
「はん?サソリと牡蠣殻ねえ…」
飛段は頭を掻いて首を左右にコキコキと鳴らした。胸元の飾りを手繰ってにやりと歯を剥いて笑う。
「ありそうにねえ事があったりすっと、途端に面白くなるよなぁ」
「確証はない」
再び角都が言って、イタチも頷いた。
「今の牡蠣殻は金にはなるだろうがそれ以上に面倒だ」