第11章 気掛かり
「…だから私が何語で話しているように聞こえているんです。あなたたち馬鹿なんですか。いや、馬鹿でしたね。今更言うまでもない。余計な事を言いましたね。失礼」
「謝る必要はない。何なら七両二分に負けてやらないでもないぞ。俺は長生きしているだけあって日本語には自信がある」
「……長生きだけしてりゃいいってもんじゃないのはよく分かりますよ、あなたを見ていると」
「この年になって長生き以外に何を頑張れと言うのか。己の三分の一しか生きていないお前にそんな事を言われる筋合いはないぞ。それとも何か、お前は俺の孫か?…孫なのか!?」
「……何言ってんですか…」
「孫なら更に七両二朱に負けるぞ、どうなんだ」
「何ですか、そのちっさい値下げは。何でスッパリ七両に出来ないんです?孫相手でも阿漕なんですか…。救いようがありませんね」
「そう言うな、おじいちゃんこれが精一杯なんだ。許せ、鬼鮫坊」
「……鬼鮫坊…?」
「…ぶ。く、く、ぐははッ、げははははははははッ、き、鬼鮫坊!鬼鮫坊!だあーはははははははははッ!げ、ゲハッ、ゲフ…ッ、ぐ、ぐふ…ッ。……ぎゃははははははははッ」
鯖折になって笑い転げた飛段にイタチが静かな目を向ける。
「笑い過ぎだぞ、飛段。…く…。…ふ…っ」
「オメェも笑ってんじゃねえかよ!鬼鮫坊って、鬼鮫坊って…がははははははははッ」
「笑い過ぎだ、飛段。…ふ…く…。………くく…ッ。ぷ…ッ」
「イタチさん。後生の悪い笑い方をするくらいなら飛段のようにスパークした方がまだしもマシですよ」
「そうか…。すまん。しかしこれが俺の精一杯の打ち上げ花火だ…」
「…それじゃ湿気った線香花火ですよ」
「ふむ。難しいな。では打ち上げ花火とは飛段か」
「コイツは打ち上げ花火なんかじゃないだろう。爆竹だ」
「BUCK-TICK?だはー、そう!?やー、何、俺ってそんなロック?参っちゃうなぁ。照れんじゃんかよ、角都ぅ」
「喜ぶな、飛段。褒めたつもりじゃないだけに不愉快だ…」
「いいんじゃないですか、ロックで。内田裕也くらいにはイカれてますからね、このゾンビパンダは」
「何だ、オメェら、生まれ変わったみてぇに俺を持ち上げやがって…アレ?もしかして俺、治んなねえ病気か何か?だから皆そんな優しいの?俺死んじゃう訳?」
「…あなた死なないんじゃなかったんですか」