第11章 気掛かり
「ん?いやいやいや、こっち見んなよ。俺に聞いたって知らねぇよ。そもそもどっちだっていんだからよ。無駄無駄無駄無駄ァァァ。あー、USJ行きてぇなあー。ジョジョとか銀魂とかよー」
「行くか、飛段?」
「いやぁ、行かねえなぁ。オメェと俺がUSJ行ってどうすんだよ、イタチ」
「楽しむに決まっている」
「……お前、俺と行って楽しくなりそうとか思うのかよ?大丈夫か?」
「飛段とデートか。ゾッとしねえな、うん」
「うるせえぞデイダラ。さっきから臭えんだよ、何やってんだ、オメェは」
独特の芳香を放っているデイダラの手元を胡散臭げに眺め、飛段が顔をしかめた。
「ばぁちゃんみてぇな匂いがすんだけど、何なんだソレ」
「白檀だろう」
湯気の立つ湯呑みに口をつけて、イタチがデイダラの手元へ目線を流した。
「結構な代物だ。よく手に入れたな」
「高かったんじゃないのか?」
すかさず角都が値踏みするように木塊を凝視したので、デイダラは小刀を操る手を止めて傍らの白布で木塊を覆った。
「何だっていいだろ。ほっとけよ、うん」
「懲りない人ですねぇ」
イタチの隣の椅子が引かれて、鬼鮫が卓についた。
「本当に作り始めたんですね。あの人の為なら色々と無駄なように思いますが」
「うるせえな。オメェにゃ関係ねえ」
足組みして卓に頬杖をついた鬼鮫にデイダラは鋭い一瞥をくれて、片付けを始めた。
「関係ないねぇ…。まあ関係ないと言えば関係ないんでしょうが」
隠されても尚香る木塊に、鬼鮫は目を細めた。
「伽羅ですか。何処で手に入れたんです?」
鬼鮫が言うと、イタチが微かに頷いた。
「金を積んだところで容易に手に入るものではない。いい伝手を見付けたな」
デイダラはいよいよ顔をしかめて布に包んだ木塊を小脇に抱えた。
「うるせえな、人ン事ばっか気にしてんじゃねぇぞ、この暇人共が」
「暇じゃありませんよ。私とイタチさんはこれから任務で出掛けます」
「へえ。じゃさっさと行けよ。何寛いでんだ、うん?」
「今回は少し長くなりそうでしてね。気掛かりを片付けてから行きたいんですよ」
広間を見回して鬼鮫は足を組み替えた。
「サソリは何処です?」
「お前がサソリに何の用だ」
角都が帳簿から目を上げた。鬼鮫は指先で卓をトンと叩いて薄笑いした。
「気掛かりと言ったでしょう」