第8章 我儘
ドカンと扉を開けるなりシカマルの結わえた髪を掴み、すかさず逃げ出したナルトの首根っこをがっちり押さえた自来也が、目を三角にして二人の頭を打ち付けた。
「仮にも男なら覗き見盗み聞きは完璧にこなすもんじゃぜ!バレバレの覗き見盗み聞きなんぞ下の下じゃ!」
「の、覗き見?何言ってんだ、ちょっと待て」
側頭部を押さえながらシカマルがしかめ面をする。
「盗み聞きは兎に角覗き見なんかしてねぇぞ。何の話だよ!」
「覗き見も盗み聞きも男の嗜みだろが!」
「意味わかんねえってばよ!何言ってんだ、エロ仙人!?」
側頭部を擦りながらナルトが喚いた。それを聞いた自来也は腕を組んで仰け反った。
「エロ!?そうよ!それだ!全ての道はエロに通じ…あだッ」
「馬鹿言ってるんじゃない!どれだけ明後日方面に説教してるんだ、お前は!」
自来也の頭を思い切りよく殴り付けた手をヒラヒラと振りながら、綱手が額に青筋を浮かべて一喝する。ジロリとナルトとシカマルを睨み付け、五代目火影は形良く括れた腰に手を当てた。
「知りたい事があるなら正面から聞け!盗み聞きなぞみっともない!」
「何でもかんでも説明すんのが火影の仕事じゃないって、前に五代目が自分で言ったでしょうが」
シカマルが不満げに返す。綱手は顎を上げてそれに答えた。
「盗み聞きせんでも状況を把握出来るだけ敏くなるか、黙っていてもあてにされるだけの実力を持てばそんな真似する必要はない。そうなれって話だ。わかるか?」
「わかるってばよ!俺ってばまあ大体そんなだし!近い。惜しい感じ?」
頷いたナルトに綱手と自来也の目が細い線になった。シカマルの吊った目も情けなさそうに垂れる。
「ナルト、オメェな…」
「何だよ」
「いいねえ、君」
ふらりと波平が顔を出した。しみじみとナルトを見て首を傾げる。
「君が火影になったらちょっと面白いだろうな」
「うん?…ちょっと面白いってなんだよ。ちょっと引っ掛かるってばよ」
「ちょっとか」
綱手がフッと笑う。
「まあちょっとでも引っ掛かるなら良かったよ。少しは空気が読めるようになって来たって事だ」
「ええ!?俺ってばいつからフランス語なんか読めるようになっちゃった!?」
「何を言ってるんだ、お前は」
冷めたお茶が載った盆を引き取って中に入るよう二人を促し、綱手は波平に顔を向けた。