第8章 我儘
「兎に角」
シカマルが話を〆た。
「そういう訳ですんで、エビス先生」
「…粗相するんじゃないぞ、ナルト」
ジロリとナルトをひと睨みし、エビスは振り返り振り返り立ち去った。
「感じ悪ィ!いっつもアレだ。何なんだよ、アイツ」
「何かしたんじゃねえのか、オメェが」
「してねえってばよ!…?してねえよな?」
首を傾げるナルトを他所に、シカマルは眉をひそめて執務室の様子に耳を傾けた。
エビスが現れるまでに密み漏れたやり取りは、薬事場にも無関係とはいえない内容だ。あの勤勉な磯人達の暮らしに、草が現実的な影を落とし始めるかも知れない。
加えて伊草の身上に、牡蠣殻とビンゴブックの話。
「…どうなってんだ、一体…」
呟いたシカマルにナルトが頷く。
「な。お茶が冷めるってばよ」
「……オメェは黙ってろ」
「何で?お前が喋んなら俺だって喋るぞ」
「黙ってろ」
「い·や·だ」
「イヤだじゃねんだよ、黙れ」
「お前が黙ったら俺も黙る。お前が黙んねえなら俺も黙んねえ」
「何なんだよ、兎に角黙れって」
「俺に諦めさせる事を諦めろ!」
「うるせえ!そりゃここで使っちゃ駄目なヤツだろが!有り難味ダダ下がりだぞ!?」
「有り難味って何だよ。何か有り難かったか、今の?」
「空気読め、ボンクラ」
「…いっつも思うんだけどよ、空気ってどう読むの?何処に何が書いてある訳?さっぱり読めないんだけど、皆どうやってんの?」
「…書いてあんのが見えたら読めんのかよ、オメェは」
「馬鹿にすんなってばよ!読めんに決まってんだろ!?何なら目ぇ瞑ってても読める!ような気がしたけど、いや、言い過ぎた!見えなきゃ読めない!見えたら読める!と、思う!…よな?」
「…フランス語だぞ?」
「!?フ、フランス語!?マジで!?空気ってばフランス人だったのかよ!」
「あとサンスクリット語な」
「サ、サンタ?クリスマス?な、何?12月24日?」
「たまにタガログ語とかスワヒリ語」
「カタログ!?お座り!?何で!?」
「読めんのかよ」
「ぜ…全然読める気がしねえ。空気やり過ぎだってばよ!」
「だから黙ってろって…ぁいだだッ」
「何が黙ってろじゃ。デカい声出して立ち聞きしおってバカタレが!あ、コラ逃げるな、ナルトッ」
「うぎッ、いった、いた!放せってばよ、エロ仙人!」