第8章 我儘
「おい。何をしているんだ、そんなところで」
火影の執務室の扉、その左右にお茶の載った盆を持ってへばり付くように立つシカマルとナルトを、通りすがったエビスが見咎めた。
声をかけられてピッとなったナルトを怪しむように睨み付けるアカデミーの指導教員であるエビスは、ナルトとあまり折り合いが良くない。
「五代目にご用か?」
眼鏡をツイッと上げて胡散臭げに重ねて尋ねるエビスに答えかけたナルトをシカマルが制した。
「お茶を頼まれたんスよ。けど、呼ばれるまで入れないんで…」
「お茶が冷めるだろうが」
盆の上の湯呑みを目で数え、エビスはハッキリと不審な顔をした。
「中に誰が居るんだ?」
「磯に関わりのある客人が見えてるんス。だから俺が呼ばれたんスよ」
口を開けたナルトを再び制して、シカマルが答える。敢えての笑顔を見せて、窺うようなエビスを牽制する。
「そう言えば奈良は薬事場の相談役だったな」
半ば納得したエビスは、ナルトを見て顔をしかめた。
「お前は何だ?」
「何だって何だよ」
ナルトはムッとして口をひん曲げたものの、胸を張ってエビスを見返した。
「俺は相談役のシカマルの友達だぞ。相談役の相談に乗るのが相談役の友達の役目だろ!相談役だってたまには誰かに相談しなきゃな。だから相談役の相談に乗ろうってここで相談に乗ってんだよ。相談役の相談役ってヤツ?で、いんだよな、シカマル?ん?違う?相談なんかして要らない?何だよ!しろよ、相談!な!まあさ、先生も何でも相談しなよ。相談役の相談に乗る相談上手な俺にどんと任せろって、どんと!」
「…ちょっと待て、意味が分からなくて頭が痛くなって来た…。お前そんなに相談上手だったか?何をお前に任せたらいいんだ?あ、頭が…」
「頭痛えんなら帰って寝ろってばよ」
こめかみに指を添えてしかめっ面をしたエビスに、ナルトが朗らかに言い放つ。如何にも拗れそうな展開だ。シカマルは額に手を当てて息を吐いた。
「自来也さんが来てるんスよ」
「…ああ」
こめかみから指を離して、エビスは渋い顔で頷いた。
「自来也様のオマケか」
「オマケじゃねえ!何で俺がエロ仙人のオマケ…ッ」