第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
揺るぎない決意を秘めた瞳は、“鷹の目”をも凌駕する。
「だからよ、ミホーク」
ゾロは、剣士として世界最高峰に立つ男を前に、姿勢を正した。
この島に飛ばされて己の弱さを思い知り、恥を捨ててミホークに土下座をしていたあの時の姿とは違う。
今、彼にとってミホークから剣を学ぶことは、“恥”ではなく“誇り”。
「ルフィ達と再び集合する日まであと一年・・・おれに剣を教えてくれ!!」
ミホークに頭を下げるゾロは、悲壮感よりも揺るぎない信念に満ち溢れていた。
どこまでも単純で、愚直。
だからこそ彼の言葉、生き様には、人を引き付ける魅力があるのだろう。
ミホークは教えを乞うゾロを見て、微笑んだ。
この男を見ているとやはり、一年前の頂上戦争を思い出す。
クロコダイルやジンベエといった元・七武海、イワンコフら革命軍を引き連れて現れたと思ったら、“白ひげ”までも味方につけた“麦わらのルフィ”。
ロロノア、お前を見ていると奴を思い出す。
「どうやら・・・お前にも麦わらと同じ力があるようだな」
「ルフィと同じ力? おれはゴムじゃねェぞ」
「この海において、最も恐るべき力だ」
能力や技とは関係なしに、その場にいる者達を味方につけてしまう力。
「・・・?」
ミホークは首を傾げているゾロの横を通り過ぎると、壁に立てかけてあった三本の刀を拾い上げた。
そして、弟子を振り返り、口の端を上げる。
「回復しているのならさっさと準備しろ。稽古をつけてやる」
思うがままに強くなれ。
そのためにおれの剣術が欲しいというのなら、全てくれてやろう。
このおれを越えてみよ、ロロノア。
「───ああ、必ずお前を越えてみせる!!」
ジュラキュール・ミホークとロロノア・ゾロ。
将来、“歴史に残る大剣豪”として世界に広く語り継がれることになる二人は、この時を境に真の師弟となっていた。