第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
単純。
愚直。
きっと麦わらの一味とはこういう人間の集まりなのだろう。
シャンクスが彼らのことを語る時はいつも、新しい時代の始まりを見るように興奮しているが、その理由が今なら分かる。
なるほど・・・
おれもこの者達がどのような道を歩んでいくのか見てみたい。
「幸せに願う気持ちを大事にしろ・・・か」
ミホークはクスリと笑うと、悪魔のような瞳をゾロに向けた。
「自分で言った言葉だ、二言はないな?」
「あ?」
「クレイオを幸せにしなければ、このおれがお前を殺す」
ロロノア・ゾロ。
もしクレイオが貴様のせいで苦しむことがあれば、その時こそ迷いなく貴様に剣を向けよう。
「そいつはいい。お前の本気の剣を見れるのは、その理由がなんであろうと光栄なことだ」
クレイオを幸せにできなければ死───
だが、ゾロはまったく臆せずに微笑んだ。
その上で、首を横に振る。
「でも、クレイオを幸せにするという約束はできねェよ」
誰かを幸せにすることよりも先に、自分のために生きることを選ぶのが海賊だ。
ウソップの父がそうであったように・・・
「もちろん、約束できることはある。いや・・・約束っつうか、おれが勝手に決めたことだがな」
この先、クレイオがどのような道を歩んでも。
「あいつを不幸には絶対にさせねェ」
この海のどこにいても、あいつの人生はおれが必ず守る。
あいつが望んだ道を歩けるよう、
あいつが大切だと思うものを失わないよう、
おれはどこまでも強くなってみせる。
「それでクレイオが幸せになれるかどうかは分からねェ。そもそも、それはあいつ次第だからな」
けれど、少なくとも不幸にはならないだろう。
「ルフィや仲間、クレイオがしっかり夢を叶えられるよう、おれがあいつらの背中を守る」
それができた時、おれは“世界一の大剣豪”の称号を手にしているだろう。