第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
柔らかく煮ただけの白米など、ミホークは口にしたことがない。
おそらくクレイオもそのはずだと首を傾げていると、ゾロが後ろから声をかけてきた。
「ソレ、多分ペローナが作ったやつだな」
「ペローナが?」
「もっと腹にたまるモンの方が良かったんだけどよ」
すっかりと冷めてしまっているが、丁寧に梅干しまで添えてある。
その赤くて酸味の強い漬物を見ていると、いつぞやのペローナとのケンカが思い起こされる。
“クレイオがぶっ倒れた。お前、粥を作って持っていけ”
“何で当然のように私に命令してんだ! それに体調が悪い時はチキンスープに決まってるだろ”
“粥だろ、普通”
“粥なんて味も栄養もねェもんを持っていってどうするんだ”
貧血を起こして倒れたクレイオに、粥を持っていくか、チキンスープを持っていくかで揉めたゾロとペローナ。
あの時は、“粥なんてありえねェ”と言っていたペローナだったが・・・
「ありがてェよな」
ゾロはふと微笑み、粥の入った器を持ち上げた。
そして、ドアの前に立っているミホークを横目で見る。
「自分の知らないところで、誰かが自分のことを気にかけてくれているってのはよ」
チキンスープではなく粥を作ったペローナの心遣いが、素直に嬉しい。
「お前も、そうなんじゃねェのか?」
ニッと笑ったゾロに、いつもの凶悪さはなかった。
それどころか、誰も届かないようにこれまで閉ざし続けてきたはずのミホークの心に、スルリと入り込んでくるようだ。
「ああ・・・それには同意する」
自分の知らないところで、誰かが自分のことを気にかけてくれている。
それはとてもありがたいことだ。
シャンクスが勝手にクレイオを母親の“故郷”に連れていったと知った時、最初はあの能天気男にクレイオの母が生まれた島について話したことを後悔した。
でも、娘が大勢の人間を殺したと聞いては、彼女をシャンクスに託すしかないと思った。
暇つぶしに人を殺すような自分には、クレイオを生かすことは出来ても、救うことはできない。
だが、信念に反する暴力は絶対に振らないシャンクスなら───