第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「シャンクスにさっき、一緒に連れていって欲しいと頼んできたところよ」
「お前・・・まさか海賊になる気じゃねェだろうな?」
するとクレイオは声を上げて笑った。
「あはは、それもいいかもしれない。そもそも私は海賊の娘だし」
「・・・おい!」
「でも、心配しないで」
島を出ていくのは、ようやく自分の生きる道が見つかったから。
「私は母が生まれた島に帰ろうと思う」
そこは、地獄の方がマシだとされるほど治安の悪い島だけど・・・
「そこには母のように両親の顔を知らない子ども達がたくさんいるから・・・私はその子達の“聖母”になるつもり」
島に一つだけある教会で、私は命の重さと愛情を子ども達に教えていきたい。
これまで世界政府から神父様がたくさん派遣されたが、誰一人、長くはもたなかった。
そんな危険な教会でも、ミホークの血とシャンクスの剣術があればやっていけると思う。
「そうか・・・いいんじゃねェか?」
クレイオの想いを聞いたゾロはふと微笑むと、クレイオの頬を引き寄せて唇にキスをした。
「まさに『菊幻』の前の持ち主、そのものだな」
剣を掲げて人を導き、長く続いた争いを鎮めた聖女。
彼女の持っていた剣がクレイオを選んだように、運命もまた彼女に似た道をクレイオに辿らせようとしているのかもしれない。
「どこまでできるのか分からないけれど、私には心強い海賊が三人もいるからきっと大丈夫」
ミホーク、シャンクス、そしてゾロ。
「シャンクスなんて、あの島の教会を“赤髪海賊団”のナワバリにしようかって言ってくれたしね」
いくら無法地帯の人間でも、四皇のナワバリに手を出せばどうなるかぐらいは分かるだろう。
「けど、それは断った。ナワバリになるなら“麦わら海賊団”がいいから」
「お前・・・」
「だから、絶対に叶えてよ」
貴方の船長を海賊王にすること。
そして、貴方自身が世界一の大剣豪になること。
「四皇の後ろ盾を蹴っちゃったんだから・・・あとは“海賊王”しかないでしょ!」
クレイオの顔には、不安も迷いも無かった。