第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
“ゾロはいいね、男の子だから・・・私だって世界一強くなりたいよ!!”
“人間は・・・なんて脆いんだろうね・・・ゾロ・・・”
人間は脆い。
床に落としたガラス細工のようにある日突然、粉々に壊れてしまうことがある。
だから人は強さに憧れるのだろう。
自分が壊れないように、そして、壊れてしまった人の遺志を守るために。
“約束しろよ!! いつか必ず、おれかお前が世界一の剣豪になるんだ!!”
亡き親友と二人で競った称号。
くいなが手にしないのであれば、それをおれ以外の誰かに渡すわけにはいかない。
ジュラキュール・ミホークをその座から引き摺り下ろすまでは、絶対に死なない。
そう固く誓っていたはずなのに・・・
海で出会った二人の人間が、自分を大きく変えてしまった。
くいなとの約束に捧げたはず命を、別の人間のために捨ててもいいと思うようになってしまった。
その一人は、未来の海賊王。
そしてもう一人は・・・
「クレイオ・・・?」
目を覚ましたゾロの視界に真っ先に飛び込んできたのは、見慣れた天井。
そこからゆっくりと視線を下に落とすと、ゾロの脇腹の辺りで突っ伏しているクレイオがいた。
看病しているうちに眠ってしまったのか、ベッドの脇に持ってきた椅子に座り、静かな寝息を立てている。
「・・・・・・・・・・・・」
部屋には小さなランプの明かりしかなかったが、壁の時計の針を見るには十分だった。
時刻は2時58分。
暗さからいって、深夜の方か。
ゾロは上半身だけを起こすと、自分と掛け布団の間に挟まっていた薄手の毛布を引っ張り出し、クレイオの肩にかけた。
「ん・・・ゾロ?」
「悪ィ、起こしたか」
ミホークと勝負をしたことははっきりと覚えている。
何日間寝込んでいたかは分からないが、かなり心配をかけてしまったに違いない。
「そんなとこで寝てんな。風邪ひくぞ」
「ゾロこそ大丈夫なの? 怪我人は貴方でしょ」
目を擦りながらゾロの顔色を確認してくるクレイオは、さすがに疲れているようだった。