第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「クレイオ、ここに来い」
“鷹の目”は娘をそばに呼ぶと、テーブルの上に置いてあった小箱を手渡した。
「大きい珠が6、小さい珠が53・・・そして十字架とメダイ。それで間違いないな?」
「これは・・・」
小箱の中に入っていたのは、ラピスラズリとローズクォーツの珠。
それはミホークの斬撃を受けてバラバラになったクレイオのロザリオを形作っていたものだった。
「もしかして、全部拾ってくれたの?」
ゾロの介抱に気を取られて、ロザリオの珠を探すのを忘れていた。
でもまさか、ミホークが拾ってくれていたとは・・・
「───お前の母親の形見だろう」
「・・・!」
このロザリオが母親から貰ったものだとは一言も言っていない。
なのにこの人は何でそれを知っているのだろうか。
小箱を握りしめたまま立ちすくむクレイオを見るミホークの瞳には今、15年前の光景が映っていた。
“娘のためにロザリオを作っているんです”
なぜ群青色とピンク色の石なのかと聞くと、美しい人は微笑みながら答えた。
“ラピスラズリの青は、夜を象徴していると言われています”
『夜』はミホークの愛刀の名。
“ローズクォーツは愛を象徴する石・・・娘の周りには常に愛がありますように”
母が祈りを込めながら作ったロザリオは、ミホークの斬撃からも娘を守った。
今こうしてクレイオが無傷でいられるのは、父が身を挺して斬撃を逸らしたのと、母の『ロザリオの祈り』に他ならない。
「・・・ごめんなさい、ミホーク」
「何がだ」
「ミホークはお母さんとのことを話してくれたけれど、私はまだ一つだけミホークに話していないことがある」
クレイオはロザリオの珠を大事そうに抱えながら、父を真っ直ぐと見つめた。
その瞳に母の面影はない。
しかし、その眼差しは母と同じく慈愛に満ちていた。