第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
振り返ると、水の入った瓶を持ったクレイオが部屋の入口に立っていた。
どうやら酒盛りをお開きにさせにきたらしい。
「もう二人ともいい歳なんだから・・・あんまり飲み過ぎないでよ」
「バカなことを言うんじゃねェよ。ボトル10本空けたぐらいでこのおれが酔うわけがねェ」
「床に転がっている空ボトルの数を、正確に数えられないくらい酔っているということね、シャンクス」
ミホークとシャンクスの足元には少なくとも20本の空瓶が転がっている。
クレイオに止められても仕方のない量だった。
「私は二人を心配しているの。はい、水を飲んで」
「・・・ミホーク、お前の娘は随分と口うるさいな」
「お前に似たのだろう」
渋々と水を受け取るシャンクスとミホークに、クレイオはやれやれと肩をすくめた。
放っておいたら朝まで飲んでいるだろうし、シャンクスは明日中には出立すると言っていたから、仮にも船長を泥酔状態にして仲間のところへ帰すわけにはいかない。
「そういえば、ゾロの具合はどうだ?」
シャンクスはまだゾロと顔を合わせたことがないが、ルフィの右腕である彼のことはもちろん放っておけなかった。
「さっき、腹が減ったって叫びながら起きたと思ったら、そのまままた寝ちゃったみたい。今はペローナが看てくれてる」
ミホークとの勝負の直後は昏睡状態だったが、シャンクスの仲間の船医に手当してもらってからはだいぶ落ち着いている。
目覚めるのもすぐだろう。
「そうか、そりゃ安心だな」
「ありがとう、シャンクス」
ゾロに代わって頭を下げるクレイオに、シャンクスは何かを悟ったらしい。
“ルフィの仲間もスミに置けねェな”と笑いながら水をグイッと飲みほした。
「ミホークにとっちゃ、心配の種が増えたんじゃねェのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
父親に堂々と“娘を抱く”と宣言する男が、信用できるのかできないのかは分からないが、今のミホークにはもう、ゾロとクレイオの仲を否定するつもりはなかった。