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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)




「どうしてお前はそこまで・・・自分を犠牲にできる?」

お前さえ望むなら、お前と娘を今すぐこの島から連れ出してやる。
もし海賊と生きることを拒むのなら、どこか平和な島にでも連れていってやろう。

「生きたいとは・・・思わないのか?!」

言葉に出せないながらも・・・おれはお前に生きていて欲しいと、これほど願っているというのに・・・

すると、クレイオは儚く微笑みながら首を横に振った。


「死は怖い。けれど・・・生きていくことにも少しだけ疲れました」


“あいつが許せない”

“なんでうちの子が病気にならなければいけないの。他の子が死ねばいいのに”

“自分よりも幸せな人間が憎くて堪らない”


絶え間なく聞こえてくる“声”に、そろそろ耳を閉ざしたい。


“最近、不作なのは魔女のせいだ”

“伝染病を持ってきたのも魔女のせいだ”

“神との誓いを破った異端者、それはクレイオに違いない───”


「私はずっと疎まれ続けた人間でした。でも死ぬ時ぐらいは・・・」


何を言われようと、どんなに傷つけられようと、私は島の人を赦したい。


「死ぬ時ぐらいは、“聖女”でありたい」


慈愛に満ちた聖母のように、神の恩寵を受けながら最期の時を迎えたい。
何より、自分が魔女にならなければ、この島の狂気は最も“異端”である娘に向けられてしまうでしょう。


「お願いです、ミホーク・・・貴方なら娘を一目見ればすぐに分かります」

「・・・・・・・・・・・・」

「私がお願いできる立場でないことは分かっています。その見返りとして貴方に差し上げられるものも何一つありません・・・」


何があっても、娘を道連れにすることだけはしたくない。
どこでもいい、どのような形でもいい、ただ生き延びて欲しい。

そして、できることなら・・・

笑顔で生きていて欲しい。


「それでも、貴方が娘を守ってくださると約束してくたら・・・私は・・・私は・・・」

ミホークの腕をつかむ震えた手。
それをどうして振り切ることができようか。

東の地平線に沿って一筋の金色の光が走り始めた瞬間、それまで必死に堰き止めてきた感情が一気に溢れ出たのが分かった。







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