第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「神父様はその10年後に死ぬまで、私を育ててくださいました。その恩に報いるため、私は修道誓願を立てたのです」
修道女として、自身も神に仕える道を選んだ。
「私はこの島の人間ではない。だからこそ、この島の人達を愛したいんです」
そうしなければ、あまりに孤独だから・・・
皆を愛していれば、少しでも受け入れてもらえるかもしれない。
「亡き神父様は、私の出生を秘密にしてくださいました。だけど、神父様にとっても予想外だったのは・・・」
クレイオに人の“声”を聞く力があったこと。
「私は物心ついた時から他人の考えていることが分かりました。どんなに耳を塞いでも聞こえてくる、誰かの心の声・・・怖くて、怖くて、仕方がなかった」
ミホークのように鍛錬を重ねて習得したのと違い、生まれながらにして“見聞色の覇気”を持つ人間は、その力をコントロールできずに苦しむ者が多いという。
誰かが救いを求めているのに、何もしてやれない無力さを常に感じていたクレイオは、自身も神に救いを求めたのだろう。
「人の声を聞くことができる私は、島の人達にとって異質。修道女ならともかく、ある日突然修道誓願を破り、子どもを産んだとあれば、それは異端者でしかないのです」
だから、魔女狩りが行われるなら、火あぶりになるのは私以外にはいない。
クレイオはミホークの頬を両手で包むと、そっと唇にキスをした。
「きっと貴方に会うのも今夜が最後・・・だから、一つだけお願いがあります」
彼女の瞳には涙が浮かんでいた。
訪れる運命を受け入れる前に、どうしてもやっておかなければいけないことがある。
「娘をどうか守ってください」
あの子には何の罪もない。
随分と我慢をさせてきたし、十分な愛情を与えられていない。
「あの子に一切関わらないでと言ったのは私ですが・・・貴方以外にお願いできる人がいないのです」
声を震わせながら嘆願するクレイオを見ていられなかった。
彼女をここまで不安にさせる原因を全て壊してしまいたい。
島の人間を皆殺しにしてでも・・・・・・