第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
───嫌な予感がする。
そしてそれは見事に的中した。
「そうかそうか、ミホークにガキがなァ・・・! うん!!」
30分もしないうちにやってきた赤髪海賊団の船員達は皆、大量の食べ物と酒を持っていた。
それを見たミホークは頭を抱えたが、対照的にシャンクスはとても嬉しそうだった。
「そりゃめでたい! 祝い酒だ、飲もう!!」
「・・・・・・・・・・・・」
ミホークは本来、敵が差し出す酒に手をつけるほど迂闊な男ではない。
しかし、心底嬉しそうな顔をしているシャンクスと、クレイオが無事に出産したという安堵から、その杯を受け取っていた。
酒は安物なのに、どのような高級なそれよりもサラサラと喉を流れ落ちていく。
フワリとした温かさが腹の底に溜まり、初めてシャンクスと交わす酒に気づけば酔いしれていた。
「で、ガキは男と女のどっちだ?」
いつの間にか隣に座っていたシャンクスが馴れ馴れしく肩を組みながら聞いてくる。
いつものミホークなら振り払っていただろうが、今日は大人しく杯に口を付けながら答えた。
「女だ」
「そうか。お前に似ないといいな、可愛げがねェ女になる」
「・・・・・・・・・」
「で、名前は?」
「・・・知らん」
ミホークの杯の酒が揺れた。
“生まれてくる子に名前をつけてください”
そう頼まれ、自分が世界で一番美しいと思う名前を与えた。
だけど、クレイオがその名前を赤ん坊につけたとは限らない。
手紙にもその事に関しては何も書いていなかった。
もしかしたら・・・違う名前をつけている可能性もある。
「子どもには一切関わらないで欲しいと言われている。名前など・・・知らなくてもいい」
一切関わらない、とはそういうことだ。
言葉を交わすことも、触れることも、顔を見ることすら許されない。
この先、何があろうとも・・・
たとえば、我が子が命の危険にさらされたとしても───