第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
初めてクレイオを抱いた夜、ミホークは一つの言葉を残した。
「おれはこれからもこの島に来る。海岸から村へ向かう間、すれ違う人間を殺していく。お前の顔を見るまで、一人ずつだ」
海岸から村の中心に続く、一本道。
その途中に、ミホークに殺された青年達の墓地がある。
どうすれば良いか、それ以上は何も言わずとも分かるだろう。
そう言いたげなミホークの目に、クレイオはただ頷くしかできなかった。
その言葉通り、ミホークは決まって満月の夜に島に現れた。
深夜、誰もいない一本道を歩く彼の足を最初に止めるのは、修道女。
まるでこの時間に彼がここを通ることを分かっていたかのように、青年達の墓の前で海賊を待っていた。
クレイオが修道服を着ていることに安堵したのを悟られる前に、海賊は彼女を抱いた。
その夜が晴れていようと、雨が降っていようと関係なかった。
クレイオの肌を求め、彼女の身体に熱を注ぎ込み続けた。
全てが終わった後、どれほど虚しさだけが残ろうとも、そのひと時の交わりのためにミホークは月が満ち始めると何百キロ離れた場所からでもこの島を訪れた。
「・・・神様・・・お赦しください・・・ッ」
だが、クレイオは決してミホークを受け入れることは無かった。
キスをされている時も、愛撫をされている時も、挿入されている時も、決してその瞳はミホークを映すことはない。
行為が終われば、何事も無かったかのように着衣を整えて教会に戻っていく。
心の中ではどれだけミホークに対する怒りと憎しみが渦巻いていようと、その事をおくびにも出すことは無かった。
そしてまた満月が空に上がる夜、墓地の前で海賊を待っている。
ただ、その繰り返し。
二人の心が交わる事は、決して無かった。