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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)




「───やめろ」

ミホークはいたたまれなくなり、クレイオの口を手でふさいだ。

救いを求めるのではなく、自らに罪があるものとして神に赦しを請う。
これから傷つけられるのは自分だと分かっているはずなのに、何故、彼女はこうも強い瞳をしていられる?


「耳障りだ、その祈りは」


非情な手に摘み取られようとしている、一輪の花。

彼女を一目見た時、その美しさよりもまず、鋭い棘に目がいった。
優しい色の花弁に、心地よい香りを漂わせているのに、触れようとすれば皮膚深くに突き刺さる棘を全身に張り巡らせている。

それが、他人のために命を差し出しながらも、純潔は神にのみ捧げた修道女なのかと思うと、その強烈な魅力に抗えなくなった。

ミホークはこの時、まだ20歳を超えたばかり。
海賊としてどれほど名が知られようと、衝動的な欲望を抑える術も、発散させる術も持ち合わせていなかった。


「恵みに満ちた聖母様、 主は貴方とともにおられます」


本来はロザリオを手に持って捧げる祈りだが、それが叶わない今は、代わりにミホークの瞳を真っ直ぐと見つめながら唱える。

このような女・・・いや、人間は初めてだった。


“何を恐れているのですか?”


一カ月前、島の青年を何人も殺していた男の脅威になるような人間は、この島のどこにもいなかった。
それなのにクレイオはミホークの心に、恐怖を見出していた。

彼女の祈りはまるで、茨の道に堕ちようとしている男のために捧げられているようだ。


「聖母様・・・罪深い私達のために、今も、死を迎えるときも───」

「やめろと言ったはずだ」


右手で口を塞ぐようにクレイオの顔を抑え、墓の前の芝生に押し倒す。
後頭部を地面に打ち付けたせいか、クレイオが僅かに悲鳴を上げた。

その表情を見て湧き上がるのは、罪悪感ではなく劣情。

満月の光に照らされたクレイオは、とても美しかった。
揺るがない信仰心と、決して海賊に屈しない意志が、余計に彼女をそうさせている。









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