第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「やめて!!!」
緊迫した空気を裂くような声が響いた。
見れば、ペローナに案内してもらってきたクレイオが、少し離れた場所で息を切らせながら立っている。
おそらくそれ以上は、ゾロのミホークの覇気のせいで近寄れないのだろう。
ペローナはもっと離れた場所で震えていた。
「ミホーク、ゾロは貴方の弟子でしょう!! 殺さないで!!」
「この男が弟子というならば、弟子の望むことを叶えてやるのが師の務めだろう」
クレイオの目の前だろうと、ミホークは気を変えるつもりがないようだ。
腰を落として剣を持つ手に力を込める。
「ミホーク・・・!!」
クレイオが駆け寄ろうとした、その時だった。
「邪魔すんじゃねェ、クレイオ!!」
もう立っているのもやっとなはずのゾロの叫び声がそれを制止する。
「今・・・ようやく面白くなってきたところなんだよ」
「は?!」
「世界最強の剣士が本気でおれを殺しにきている・・・こんな機会は、滅多にお目にかかれねェ!!」
イカれている・・・!
クレイオはゾロの嬉しそうな顔を見てゾクッとした。
彼は見るからに瀕死の状態だ。
目の焦点が合っていないから、おそらく失血のせいか、目に血が入ったかで見えなくなっているのだろう。
今のゾロなら赤子でも倒すことができる。
「そんな状態で・・・何を言っているの?」
ミホークはゾロにトドメを刺そうとしている。
初めて見る、剣を構える父の姿。
子どもの頃に一度だけ見た父はただ、適当に剣を振るだけで人を殺していた。
だが今は、刀すらまともに握れていない弟子を殺すため、本気で技を出そうとしている。
「これはおれとミホークの勝負だ・・・“決着”が着くまでは邪魔すんじゃねェ」
その決着が、自分の死であろうとも。
「その意気や、良し」
それは、ゾロの決意と生き様を評価したのだろうか。
ミホークは冷酷な笑みを浮かべると、構えていた黒刀を振り下ろした。