第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
“───おれと勝負しろ”
それは決して、勝機があるから言ったわけではない。
だが、ゾロがミホークのもとで修行するようになってから1年。
初めて会った時こそ刃渡り数センチの小刀でゾロと戦ったミホークだが、今では稽古の時ですら油断を見せなくなった。
僅かながらも実力の差は埋められた。
そう思っていたのに・・・
「ぐはァ・・・!!」
なんだ・・・?
なんで、全身に力が入らねェんだ・・・?
立っていられずに片膝をついた地面には、ヌルリとした血だまり。
それが自分のものであると認識するまでに時間がかかるほど、ゾロからは痛み以外の感覚が無くなっていた。
「ミホーク・・・」
見上げれば、10メートル先にミホークが佇んでいる。
おかしい・・・
確か、勝負を始めた時もあそこに立っていた。
「引け、ロロノア。お前の右腕と左脚の腱を斬った・・・お前は剣を握るどころか、まともに立つことすらできん」
おれは奴を数歩と動かすこともできずに、ここまでやられたのか・・・?
ダラリとぶら下がっているだけの右腕、地面に落ちた『秋水』。
左脚はもう、付いているのか、付いていないのかすら分からない。
「バカ野郎・・・おれは三刀流だぞ・・・一本ぐらい使えなくなったところで───」
「笑止!」
ミホークは黒刀『夜』の切っ先をゾロに向け、冷たい瞳で見下ろした。
「流儀とは使う刀の本数ではないことぐらい、分かっているだろう」
刀を三本使うことと、三刀流は違う。
「貴様の三刀流で、おれを数歩動かすことができたか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「二刀流が三刀流に劣るとは言わん。だが、今のお前に何ができる?」
あらゆる技と奥義を使っても、ミホークにかすり傷一つ付けることができなかった。
そもそも、ミホークの実力の限界を知りもしないのに、自分の実力との差が縮まったと考えるのは、思い上がりも甚だしい。
最初の一振りから劣勢だったゾロがボロボロになっていくのを見かねて、ペローナが慌ててどこかへ行ったが、今の彼にはそんなことなどどうでも良かった。