第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「ミホーク・・・サウスブルーまで・・・何をしに行っていたの?」
「・・・・・・・・・・・・」
シンと静まり返る食堂。
ミホークはクレイオとは目を合わさず、ただジッと食卓の中央に置かれた燭台を見つめていた。
床に飛び散ったコーヒーの匂い。
ミホークの身体から香る潮の匂い。
燭台のキャンドルが燃える蝋の匂い。
むせ返るようだ・・・
ペローナは床から2メートルほど浮いた場所で、心配そうな瞳をクレイオに向けている。
ゾロは席に着いたまま、何も言わずに静かな瞳をミホークに向けていた。
「同じことを何度も聞くな」
“鷹の目”が冷たく光る。
「ただの暇つぶしだ。魔女狩りという下らん私刑に憑りつかれた者達を潰すというな」
一切の慈悲がない言葉。
たったそれだけで確信を得た。
ミホークはきっと・・・世間的に知られていないだけで、今まで世界各地で行われている魔女狩りを片っ端から潰してきたのだろう。
そこまでして魔女狩りを憎む理由とは・・・?
「ミホーク・・・あの、一つ聞きたい事が───」
「クレイオ」
ミホークはクレイオの言葉を遮ると、ゆっくりと振り返って青ざめた娘の顔を見る。
「おれが帰ってくるまでに時間がかかったのは、別の島に寄っていたからだ」
「別の島・・・?」
「“赤髪”に会っていた」
シャンクス・・・?
自由気ままに航海する赤髪海賊団を追いかけるのは容易ではない。
だから一カ月以上も留守にしていたのか。
でも・・・なぜ・・・?
「一刻も早くこの島に来るよう、話を付けてきた」
「え・・・?」
「おれと違い、向こうは大所帯だ。すぐには出航できなかったようだが、あと二日もすればこの島に到着するだろう」
クレイオはミホークが何を言っているのか分からず、ただその場に立ち尽くした。
シャンクスに何で会ってきたの?
あと二日もすれば来るってどういうこと?
「お前は奴と一緒にこの島から出ていけ」
その口調には、有無を言わさぬ圧力が込められていた。