第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
ゾロは咄嗟にミホークの顔色を見たが、いつもと変わりはないようだ。
ならば、先ほど感じた殺気はやはり気のせいだったか・・・?
「お前、いったい今までどこに行ってたんだ?」
ペローナがミホークの方へフワフワと飛んでいく。
その顔が少し怒っているのは、連絡もなしに長期間不在にしていたからだろう。
「海軍に呼び出されていたのか? またあの時みてェな戦争が起こるんじゃねェだろうな?」
ペローナの言う戦争とは、マリンフォード頂上決戦のこと。
そこでゲッコー・モリアが死んだとされているため、また誰かを失うのが怖いのかもしれない。
「・・・いや、そういうわけではない」
「じゃあ、一カ月以上も何やってたんだ」
ミホークは七武海だが、海賊団を持っているわけではない。
いくら優れた剣士とはいえ、理由もなく一人でふらりと海に出る事は考えられない。
「サウスブルーに行っていた」
その瞬間、ゾロの脳裏に数週間前にクレイオに見せられた新聞の見出しがよぎる。
“魔女狩りの祟りか、村が一夜にして焼失”
魔女狩りを秘密裏に行っていた島が、海賊によって壊滅的被害を受けたという事件。
詳しい被害状況も、海賊団の名前もニュースになっていないが、クレイオはこの犯人がミホークなのではないかと怯えていた。
何より、魔女狩りによってクレイオの母が亡くなっている。
「なんでまたそんな所に?」
「別に・・・ただの暇つぶしだ」
「暇つぶしでわざわざサウスブルーまで行くもんかね」
ペローナが何の気なしにそう言った時だった。
パリンッと背後でグラスが割れる音がする。
見ると、クレイオがミホークの為に淹れてきたコーヒーのカップを床に落としていた。
「サウスブルー・・・?」
やはりクレイオもゾロと同様、あの時のニュースを思い出しているようだ。
ミホークとは縁もゆかりもない島。
だが唯一、彼の興味を引くものがあるとすれば、それは“魔女狩り”。