第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
眼、耳、鼻、舌、身、意
人の感覚を司る六根に、好、悪、平
またおのおのに浄と染
“一世三十六煩悩”
「骨も残さねぇつもりだから覚悟しろよ」
食欲、財欲、名誉欲、睡眠欲、色欲───
人間が持つ、煩悩五欲。
剣の道を歩む者として自分を戒めてきたのに、たがが外れるというのはまさに今のような状況を指すのだろう。
「ゾロ・・・!」
自分の部屋に戻るなり、ゾロはクレイオをベッドに放り投げた。
夜更かしのペローナはまだ起きていないようだが、昼前だから当然のごとく部屋は明るい。
それが気になるのか、クレイオは躊躇した顔を見せているものの、ゾロの方はお構いなしにベッドに上がる。
「ち、ちょっと待って」
「あ? 観念したんだろ?」
「そうだけど・・・! 汗かいたからシャワーを・・・」
「必要ねェ。だいたい、どんだけ待たされたと思ってんだ」
つまんねェことを気にすんじゃねェ、とゾロは眉根を寄せているが、先ほどの手合わせでゾロは胸から、クレイオは太ももから血を流している。
先に手当をした方がいいし、身体の汚れも気になって仕方がない。
「せめて傷の手当をしてからにして」
「チッ・・・手当をすりゃいいんだな?」
ゾロはクレイオの右膝の裏を掴むと、右脚を持ち上げて血が滲んている箇所に舌を這わせた。
「ちょっと・・・!」
「こんくらいの傷は唾付けときゃ治る」
まさかそれを本気でやる人間がいるとは。
それに、傷はそこまで深くないけれど、唾液がつくと沁みる。
何より、血を舐めとられているという事にとてつもない羞恥心を覚えた。
「ゾロ、やめて!」
「・・・黙ってろ」
女の血の味に興奮したのか、ゾロは獣のような目で太ももを舐めながらクレイオを見下ろす。
「美味ェな」
猛獣の欲望がひとたび解き放たれたら最後、喰いつくされるまでその爪と牙から逃れることはできないのかもしれない。
今度は衣服ごと、太ももの最も柔らかいところに噛みつかれた。