第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
するとゾロの無骨な手が、クレイオの頬を優しく撫でた。
「なんだ、まだ浮かねェ顔だな。人間を殺すのがそんなに怖ェか?」
「殺している時は怖くない・・・けれど、殺した後・・・とても後悔する」
たとえ生きる価値がないほどの罪人でも、神のもとでは等しい命。
それを奪う権利は誰にもない。
分かっている・・・分かっているのに、怒りで我を忘れると彼らの命など虫けら以下のように思えてしまう。
「おれは後悔しねェな」
「ゾロ・・・?」
ゾロは顔を上げ、遥か遠くの空を見つめた。
その瞳にはきっと、今ここにいないものが映っている。
「もし、おれの仲間の夢を阻もうとする奴がいたら、おれは迷わずそいつを斬る」
海賊王になる
世界地図を描く
勇敢なる海の戦士になる
オールブルーを見つける
歴史の謎を解く
万能の医者になる
世界の果てへ乗組員を運ぶ船を造る
グランドラインを一周して仲間に再会する
あいつらの夢を阻む者がいれば、おれは喜んで殺人者となろう。
「おれの夢は、世界一の剣豪になること・・・そうすりゃ、仲間の夢を守ってやることができる」
三本の刀を持ったら最後、自分よりも強い敵がいることは許されない。
“おれが・・・・・・世界一の・・・剣豪にくらいならねェと・・・お前が困るんだよな・・・?!”
ミホークにまったく歯が立たず、悔し涙を流しながら言ったおれに、船長は“当然だ”とばかりに微笑みながら頷いた。
ならばおれはもう、二度と敗けちゃいけねェんだ。
敵わねェ相手だからって、この命を身代わりとして差し出すことも許されない。
スリラーバーグとシャボンディ諸島でバーソロミュー・くまに会った時のように・・・
おれが死んだら、誰があいつらの夢を守る?
あいつらはただ、アホみてェにまっすぐ前だけを向いていりゃいいんだ。
ただでさえ船長は自分の夢そっちのけで、他人の面倒ごとに首を突っ込みたがる性格なんだから。
「そのためにおれは、ジュラキュール・ミホークを越えていく」
“麦わら海賊団”の最古参にして、モンキー・D・ルフィの右腕。
ロロノア・ゾロの瞳には一切の迷いが無かった。