第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
クレイオが叫んだ瞬間、ゾロは悪寒に近いものを感じた。
掴んでいた腕を放し、一歩後ろに下がる。
「お前、その目・・・」
今、クレイオは我を失いかけている。
金色に光る“鷹の目”の焦点が合っていない。
この嫌な感覚は・・・前にも覚えがある。
確か、あれは・・・
“クレイオは、おれがもらう”
“お前が何て言おうと、おれはクレイオを抱くからな”
ゾロがクレイオを抱くと宣言した時の、ミホークが放っていた覇気だ。
「やっぱお前ら親子だな」
ゾロはもう一度刀を構え直した。
ここから先は油断が命取りになる。
「そうよ!! だからこんなに苦しいんじゃない!!」
クレイオの剣の切っ先が、心臓を目がけて飛んでくる。
確実に殺そうとしてくるその刃を躱し、代わりに深く踏み込んでクレイオの太ももを斬った。
咄嗟の防御もかなわず、クレイオの衣服に赤い染みが広がっていく。
「クレイオ、よく聞け」
今度は脇腹を狙ってきた剣を受け止めつつ、クレイオの後頭部を掴んだ。
「人を赦す力なんてつけなくてもいいだろ」
そのまま自分の方に引き寄せ、クレイオの顔を胸板に押し当てる。
「そもそも、そんなの必要ねェ」
ゾロを引き離そうと、クレイオの拳がゾロの脇腹深くにめり込んだ。
だがそこは武装色の覇気によって硬化されており、逆にクレイオの手の骨が軋む音が響く。
「罪を犯した奴をただ赦すことで、そいつを本当に救えるのかよ?」
お前はガキの頃から今日まで、相当の人間を殺してきてるんだろ。
誰かがそのことを“許す”と言ったところで、お前は罪の意識から解放されるのか?
たとえ、法的に許されたとしても、お前はずっと自分を責め続けるだろう。
まさに今のお前のように。
でなければ何故、毎日神なんかに祈ってんだよ。