第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「これで確信した。お前は絶対に母親のようにはなれねェよ」
容易に振りほどくことができないよう、クレイオの左腕を強く掴むゾロ。
相手の剣の動きを警戒しつつ、怒りを浮かべている顔を見下ろした。
「それは自分が一番分かってんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前の剣術と体術、そしてこの武装色の覇気・・・これは人の罪を赦せる人間になるために身につけたんじゃねェよな」
さっさと認めちまえよ、お前の矛盾を。
じゃねェと、いつまでもつらいだけだぞ。
「お前は悪魔だ。人を赦すための力ではなく、人を殺すための力を欲したんだよな?」
クレイオの黒く硬化した腕からは血が流れていた。
覇気同士がぶつかれば、弱い方が押し負ける。
剣の使い手としても、覇気の使い手としても、クレイオがゾロに及ぶわけがなかった。
だけど、そのようなことはどうでもいい。
「貴方に何が分かる───!!!」
ああ、そうだ。
私は力を欲した。
罪もなく殺される人がいる。
人は誰しも幸せになる権利を持っているはずなのに、生まれ落ちた場所が地獄だったというだけで、犯罪の恐怖に怯えながら生きていかなければいけない子ども達がいる。
彼らを守るために、殺人者を殺す力を付けて何が悪い?!
振り上げられたクレイオの剣が、ゾロのシャツを切り裂いた。
僅かに切れた皮膚から血が滲む。
「私は強くなりたい!! 人を殺す力・・・人を赦す力・・・」
そして───
「ジュラキュール・ミホークの血を抑える力が欲しい!!!」
怒りで我を忘れた時、自分を支配するのはミホークの血。
この身体は生まれながらにして剣の使い方を知っている。
“おれがこれからお前を鍛えてやる。お前の中に眠る剣士の血が二度と暴走しねェように”
シャンクスは剣の扱い方を教えてくれた。
でも、まだ剣士の血を抑えられるまで強くはなれていない。